最新記事

ビジネス

新入社員がどんどん辞める会社に共通する「上司あるある」 価値観の押し付けで若手のやる気が低下

2022年4月11日(月)12時43分
斉藤 徹(起業家、経営学者、株式会社hint代表、株式会社ループス・コミュニケーションズ代表) *PRESIDENT Onlineからの転載

せっかく入社したばかりの新人が辞めていく理由とは…… *写真はイメージです monzenmachi - iStockphoto


新入社員がすぐに辞めてしまう会社には共通する特徴がある。『だから僕たちは、組織を変えていける』(クロスメディア・パブリッシング)を書いた斉藤徹さんは「いまの若者たちは、他人から要求や価値観を押し付けられることを嫌う。それなのに規律を押し付けるので、新入社員がどんどん辞めてしまう」という――。


なにより「価値観」を押し付けられることを嫌う

Z世代は、1996年以降に生まれ、スマホを片手にソーシャルメディアで育った世代のことです。彼らは、新たな価値観をあたりまえと感じ、人のつながりや多様性を大切にする若者たちであるため、他人から要求や価値観を押し付けられることを嫌います。

では、どうすれば「自分から」やる気になってくれるのでしょうか。

モチベーションアップのための手法として取り入れられることの多い「報酬」について、まずは見てみましょう。ふたつの実験を紹介します。

1953年、ハーバード大学の神経学者ロバート・シュワブは、筋肉疲労の仕組みを調査するために、棒にぶら下がって我慢できる時間を計る実験をしました。

普通の人が我慢できる平均は50秒でしたが、5ドル札(今の約4000円に相当)を見せて「これまでの成績を上回ったら、このお金をお渡しします」と伝えたところ、参加者は平均約2分もの間、鉄棒にぶら下がり続けました。

また2007年、ハーバード大学の経済学者ローランド・フライヤーは、3.6万人の子どもに総額10億円ものお金を支払い「お金の力がどのくらい成績を引き上げるか」という実験を行いました。

米国五都市を対象にしたところ、一都市だけが成績アップに成功しました。他の四都市が「成績があがった子ども」にお金を支払ったのに対して、その都市は「指定した課題を達成した子ども」にお金を支払ったのです。しかし、効果は長くは続かず、一年たつと改善率は半分に低下し、報酬なしのワークに興味を持たなくなるようになりました。

お金は一時的な動機づけにしかならない

これらの実験からわかることは、お金は誰でも努力すればできる単純なことに対しては、一時的な動機づけになるということです。「一時的に我慢する力を高める」とも言い換えられます。

ただし、継続すると効果が薄れ、いったん報酬を出すと報酬なしでは努力しなくなってしまいます。長期的に見ると、麻薬のように恐ろしい負の影響があるのです。

給与より大切な「黄金のスリーカード」

動機づけにおいて、お金は万能ではないことがわかりました。その後の研究で、これはお金特有の問題というより、賞罰などで「外部から行動を強いるような動機づけ」に共通することで、そのような動機づけにはいくつもの問題があることがわかってきました。

心理学者のエドワード・デシも、動機づけには「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」の二種類があり、前者には功罪があると世に問いました。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、最終的な債務再編まで何度も返済猶予か=ア

ビジネス

中国、来年も政府債発行を「高水準」に維持へ=関係筋

ワールド

ロシアがウクライナを大規模攻撃、3人死亡 各地で停

ワールド

中国、米国に核軍縮の責任果たすよう要求 米国防総省
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中