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新入社員がどんどん辞める会社に共通する「上司あるある」 価値観の押し付けで若手のやる気が低下

2022年4月11日(月)12時43分
斉藤 徹(起業家、経営学者、株式会社hint代表、株式会社ループス・コミュニケーションズ代表) *PRESIDENT Onlineからの転載

人間は、もともと内なる欲求で課題に取り組む性質を持っていて、それ自体に喜びや充実感を感じて行動する生き物であるため、外部からコントロールしようとすると、その内なる動機が失われてしまうのです。

デシはリチャード・ライアンと共同で構築した「自己決定理論」において、「自分でやりたい(自律性)」「能力を発揮したい(有能感)」「人々といい関係を持ちたい(関係性)」という3つの心理的欲求が満たされると、人間は動機づけられ、生産的になり、幸福を感じること言及しました。

「自律性」とは「自らの行動を、自分自身で選択したい」という気持ちのことです。外部から人をコントロールしようとする施策は、自律性を喪失させ、興味や熱意が失われる原因となります。

反対に、課題解決を求められた際、「実現方法に対する自由な裁量」が許されていれば、熱心に取り組み、その活動自体を楽しめます。人間は自ら選択することで自身の行動に意味づけし、納得して活動に取り組めるのです。

「自律性、有能感、関係性」が内なるやる気を引き出す

「有能感」とは「おかれた環境と効果的に関わり、有能でありたい」という心理的欲求です。自分自身の考えで活動できる(自律性を発揮できる)とき、それが最適な難易度を持った挑戦であるときにもたらされます。

有能感を感じて仕事に夢中になっている状態は「フロー体験」と呼ばれ、「フロー体験」を創りだす環境づくりが、内発的動機づけを高める施策の鍵となります。

「関係性」とは「人を思いやり、思いやりを受けたい」「人を愛し、愛されたい」と願う心理的欲求です。人は「自分で考え、決定したい」という欲求を持ちながら、一方で「他者とも結びついていたい」と願っています。

この「自律性の欲求」と「関係性の欲求」は相反するものではなく、意図すれば両立できます。なぜなら「自律性」とは「自らの行動を、自分自身で選択したい」という欲求であり、「利己的な行動をしたい」という欲求ではないからです。関係性が満たされる選択肢を自らが選べれば、双方が満たされることになります。

自らが選択したことで、自らの能力を活かして価値を生み、信頼しあう関係性が築かれていく。「自律性」「有能感」「関係性」の3つの欲求が満たされることで、「内なるやる気」が心の奥から湧き上がってきます。

歯車のような社員を生み出す「ふたつの罠」

では実際に、「自律性」「有能感」「関係性」はどうやって高めていけばよいのでしょう。ここでは「自律性」を高める方法を紹介します。ですがその前に、「自律性」を阻む「ふたつの罠」について説明しましょう。

心理学者のクリス・アージリスは、組織は人間の自然な成長を阻む特性を持つとし、それを「仕事の専門化」「命令の系統」「指揮の統一」「管理の範囲」の4つに集約しました。

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