コラム

追い込まれたトランプが、自分で自分を恩赦する?

2020年11月10日(火)17時00分

つまり「敗北を認めないトランプ」が社会の混乱を意図しているとして、憲法の規定に基づいて大統領職の停止をして自分が代行となるのです。その上で、「タダの人」になったトランプに対して、フォードがニクソンを恩赦した先例にならってトランプを恩赦するという可能性です。その上で、1月20日には、堂々と大統領の座をバイデンに引き渡すのです。

そうすれば、ペンスは短期間ではあるけれども、第46代大統領(代行?)として、トランプを退任に追い込み、その上で大統領制の権威と格式を守るために恩赦することで、評価としてはプラスマイナス・ゼロの形で、歴史に名前を残すことができます。社会も彼のことをある程度は理解するでしょうし、特に共和党のイメージダウンになることもないでしょう。

共和党としては、一気にトランプの影響力を消すことができて一石二鳥とも三鳥とも言える効果があります。

誰がどう幕引きする?

反対にトランプが故意に辞任して、ペンスに大統領権限を与えて自分を恩赦させるというストーリーになると、ペンスはダーティーな人物として歴史上永遠に記録されてしまいます。また共和党としても著しいイメージダウンになると思います。

ペンスが自分でクーデターを起こして、トランプをホワイトハウスから追放し、その上で恩赦して全てをチャラにする、そのシナリオの方が現実味はあると思います。

とにかく、このタイミングでの国防長官更迭というのは明らかに異常事態です。ペンスのクーデター説は、あくまで一つの思考実験に過ぎませんが、トランプ政権の幕引きは、本当に一筋縄ではいかないかもしれません。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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