イラン、イスラエル北部にミサイル攻撃 国際社会は沈静化探る

6月15日もイスラエルとイランでは双方への攻撃で市民が死傷し、紛争拡大に懸念が高まっている。写真はイランによるミサイル攻撃で被害を受けた現場。イスラエルのテルアビブ南部バト・ヤムで撮影(2025年 ロイター/Ronen Zvulun)
[テルアビブ/ドバイ/ワシントン 16日 ロイター] - 13日に始まったイスラエルとイランの攻撃の応酬は一段と激化し、民間人の犠牲も増えている。16日未明にはイスラエルのテルアビブと北部の港湾都市ハイファにイランのミサイル攻撃があり、家屋などが破壊された。
イスラエルメディアは、この夜間攻撃によりテルアビブで3人が死亡、数十人が負傷したと述べた。救急当局によると、ハイファでは約30人が負傷したほか、港に近い発電所で火災が発生した。
テルアビブとエルサレムの上空で爆発音が聞こえ、ロイターはテルアビブで複数の住宅が被弾したのを確認した。
国際社会は沈静化の道を探るが、双方とも強硬姿勢を崩していない。イスラエルがイランの最高指導者ハメネイ師殺害の機をうかがい、トランプ米大統領が制止したという情報もある。
イスラエルは、攻撃対象を石油・ガス関連施設にも拡大。イランは日中の攻撃も開始した。イスラエルでは16日の攻撃前までに少なくとも子ども10人が死亡。イランではこの4日間で224人が死亡し、うち9割が民間人という。
16日にカナダで開幕する主要7カ国首脳会議(G7サミット)では、イランに自制を求める内容の声明が採択される方針(関係筋)。ドイツのメルツ首相は、サミットの目標について、イランに核兵器開発・保有をさせず、イスラエルの自衛権を確保し、対立激化を避けて外交的解決の余地を生み出すことが含まれると述べた。
トランプ米大統領は、プーチン・ロシア大統領が14日の電話会談で、仲介する姿勢を示したと明らかにした。「イランとイスラエルは合意すべきで、そうなるだろう」と自身の交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。
<イランの体制転覆が最終目標か>
状況は緊迫している。イスラエルによる先制攻撃開始後、イスラエルが米に、ハメネイ師を殺害するチャンスがあると伝えてきたが、トランプ氏が却下したと米政権高官が明らかにした。米国の利益や国民が被害を受けていない段階で最高指導者の殺害を話し合うつもりはないと高官は話した。
イスラエル軍は、軍事作戦の目的はイランの核・弾道ミサイルプログラムの無効化だと説明しているが、ネタニヤフ首相は、現在実施している攻撃がイランのレジーム・チェンジ(体制崩壊)をもたらす可能性があるとの認識を示した。
ネタニヤフ氏は、米FOXニュースの番組で、軍事作戦でレジーム・チェンジも目指しているのかと質問され、「イランの体制は非常に脆弱なので、その可能性はある」と述べた。攻撃は自国のみならず世界をイランの核の脅威から守るためだと説明した。
イランは、攻撃を受けている間はイスラエルとの停戦交渉に応じないと仲介役のカタールとオマーンに表明したとされる。
<攻撃拡大、増える民間人の犠牲>
攻撃が激化する中、イスラエルもイランも相手方の市民に避難や危険回避の行動を呼びかけている。
イスラエルでは、アパートが攻撃で損壊し民間人が死傷。現地を訪れたネタニヤフ氏は「イランは民間人、女性、子どもの殺害に対して重い代償を払うことになる」と述べた。商都テルアビブでは爆発音が響き、ハイファなどにミサイル攻撃があった。
イランでは燃料貯蔵施設が攻撃された。15日のテヘラン攻撃で革命防衛隊のモハンマド・カゼミ情報部長と副部長が死亡したとタスニム通信は伝えた。