コラム

パワハラは禁止だけでは不十分 生産性向上のためには何が必要?

2020年09月15日(火)14時20分

変えなくてはいけないのは、その目的を達するための構成員へのアプローチです。リーダーの役割というのは全体的なパフォーマンスの向上ですが、そのためには構成員一人一人がパフォーマンスを向上しなくてはなりません。ですから、リーダーに求められるのは、まず個々人のモチベーションが高まるような働きかけであり、また個々人の業務を支援するためのリソース、つまり情報や資金やスキルを引っ張ってきて惜しみなく構成員に与えていくという行動だと思います。

さらに言えば、リーダーは必ずしも判断を下すための全ての知識を有している必要はありませんが、少なくとも判断を下すには、どれだけの情報をどの程度の精度で集めることが必要かという判断材料の判断はできなくてはいけないと思います。

問題は、そのようなリーダーシップのスキルを学ぶ機会が十分に用意されていないということです。また、リーダーとは年齢や過去の成功によって自動的に権限を付与された存在という認識を、社会全体で改める必要もあると思います。

パワハラ体質というのは、確かに日本経済の生産性を奪い、個々人の人生のクオリティを踏みにじってきました。それが改善の方向に向かうのは良いことですが、それだけでは十分ではありません。リーダーシップの再定義と、リーダー選抜の方法の改善が必要だと思います。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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