コラム

「リクナビ」内定辞退予測サービス、個人データ不正利用の深刻さ

2019年08月20日(火)16時30分

就活生本人は当然ながら「予測率」提供の事実を知らなかった takasuu/iStock.

<本人にとって不利な個人データの不正利用が組織的かつ大規模に行われていた相当に悪質な事例>

就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルート系列の「リクルートキャリア」が、契約した企業に対して就活学生が「内定辞退する確率データ」の販売していた事実が明るみに出ています。当初の報道では38社が料金を払ってサービスを受けているそうで、その後、徐々に利用した企業が名乗り出てきています。その中にはトヨタ、ホンダ、大和総研、レオパレスなどの企業が含まれており、リクルート自身も採用活動の中で利用していたことを公表しました。

内定辞退確率データの販売については、徐々に批判が高まっている中で、報道によれば7983人分のデータが、本人が同意していないのに提供されていたことが判明しています。就活生の中には不快感が広まっているという報道もありますが、当然だと思います。

筆者は1980年代という遠い昔のことではありますが、日本の中堅企業で新卒採用のリーダーをしていた時期があり、その経験をもとに考えると、やはり相当に悪質な事件と言わざるを得ないと思っています。

問題は2段階に分けて考えるべきと思います。まず、リクルートキャリアの説明では、昨年の就活におけるサイト閲覧のデータから、人工知能(AI)がアルゴリズムで抽出したものが使用されているとされています。つまり、ビッグデータを使っているというのですが、これはおそらく次のような作業だと考えられます。

昨年の就活において、「リクナビ」のサイトには何十万人という就活生が訪問して、様々な活動をサイト上で行ったわけです。そのデータを使って、次のような分析をしたことが推測されます。

ある人が就活の時期に、リクナビのサイトで各社のサイトを閲覧したとして、「内定が出て実際にその会社に就職した場合、その会社の閲覧パターン」「内定したが辞退した場合、その会社の閲覧パターン」などをAIを使って、つまり相当に大きなデータを統計処理する形で集めていったのでしょう。その上で、全体的なパターンを分析していったのだと思います。

報道では、非常に単純化して「内定を出した会社の側から見て、前年に辞退した学生が内定後にも他社サイトを閲覧していたデータ」などを分析してパターンを発見していったような説明がされています。

おそらくそれだけではないはずです。辞退された会社の側から見て、自社が内定を出す前に、とっくに内定が出ていて「そっちが本命だった」場合には、自社が内定を出した「後にまだ閲覧を続けていた」というケースには当てはまりません。むしろ、自社より先に内定していた会社が結局本命だったというケースの方が、もしかしたら大きいかもしれず、そうしたケースも漏らさずパターンとして認識していた可能性はあると思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、関税巡り「韓国と解決策見つける」=聯合

ビジネス

米国株式市場=S&P最高値更新、ヘルスケア株急落で

ビジネス

NY外為市場=ドル152円台、協調介入の思惑で 指

ワールド

米、ベネズエラにCIA拠点設置を検討=報道
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化はなぜ不可逆なのか
  • 3
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに...宇宙船で一体何が?
  • 4
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 7
    「恐ろしい...」キリバスの孤島で「体が制御不能」に…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    生活保護と医療保険、外国人「乱用」の真実
  • 10
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 10
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story