コラム

高等教育無償化の定着には、成功事例のモデルが必要

2018年07月03日(火)17時45分

一方で、地方の場合はまだ公立中高での「補習」などがきちんと行われ、塾へ行かなくても平均以上の学力に到達することができるケースが多くあります。こうした層には、大学の無償化という経済的援助は大変に効果的であり、とにかくそこで埋もれた才能を伸ばしていくことで、制度の成果を挙げて行くことも可能だろうと考えられます。

その結果として、少し先にはなるのでしょうが、高等教育の無償化が結果的に地方で大きな効果をうむようになり、地方経済の再生にひと役買うことになれば素晴らしいと思います。また、そうなれば、「塾代が払えなくてはエリートになれない」という首都圏など大都市圏の「教育政策の歪み」があらためて問題視されるのではないかと思います。

いずれにしても、8000億円という国費、つまり2019年9月に消費税の2%引き上げを行った場合の税収増見合いを4兆円とすれば、その20%が投入されるわけです。バラマキに終わるのではなく、しっかりと成果を産むように知恵を絞っていかなくてはなりません。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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