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バングラデシュ人質事件、日本はこれから何ができるのか?
問題はこの2つの要素が結びつく可能性があるということです。ハシナ政権は、極めて親日的で、今回の円借款事業にも大変な期待感を持っていると思います。過去の様々な政権が、結局は「国民を貧困から救えなかった」ために潰されてきたことを深く認識している現政権は、政権を安定化させるには経済成長を確実にするしかなく、そのためには日本の援助と技術協力は不可欠だからです。
ですが、今回の事件に対するリアクションによっては、国内の過激なグループが、日本の円借款事業や、日本人そのものをターゲットにする可能性があります。この点に関しては、では危険だからということで必要な援助ができなければ、国全体が貧困から抜け出すことができず、ハシナ政権は苦境に立ってしまうでしょう。
【参考記事】バングラデシュ人質事件の余波、繊維産業へ大打撃か
そこで3つ提案したいと思います。
一つ目には、安倍政権は「今回の事件はISISの仕業で、欧米と共にテロと戦う」というメッセージを出すのは控えるべきです。バングラの国内問題を、ファンタジーともいうべき聖戦イデオロギーとリンクさせようとする連中の思うツボだからです。
二つ目には、ハシナ政権に対しても、何らかのルートを使って「今回の事件を材料にしてジャマティ・イスラミ、あるいは間接的に関連があるとしてBNPに政治攻勢をかける」のは控えてもらわなければなりません。国家の分断は、治安を悪化させるだけで、改善はしないからです。野党陣営への弾圧が始まっている気配もありますが、何としても引き返してもらわなくてはなりません。
3つ目には、とにかくプロジェクトに関わっている日本人に、ピンポイントの精緻な治安情報を伝える仕組みを作らなくてはいけないということです。殺害された方々は、コンサルという立場で「縁の下」の苦労をしていたことが拝察されます。そうした方々に、大使館やJICA事務所が持っていたのと同レベルの安全情報が届いていたか。そこは徹底的な連絡体制の見直しが必要だと思います。
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