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冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
オバマも共和党も決定打なし、どうなる米国の雇用政策
2008年9月のリーマン・ショックの「3周年」が近づいていますが、アメリカの景気低迷が本格的に底を打ったという兆候はまだありません。それどころか、8月の米国債格下げと欧州の財政危機問題がズルズルと尾を引く中、「景気の二番底はあるか?」とか「一度も良くなっていないのだから一つ目の底が底なしに向かっているだけ」などという悲観論が出たり入ったりしているわけです。
そうした状況の中で、先週の金曜日(2日)には8月の月次雇用統計が発表されて、単月での新規雇用の増加がゼロだったという数字が一人歩きし始めました。その直後は、月曜日がレーバーデー(労働者の日)の3連休だったのも皮肉ですが、その連休明けの今週は、オバマも共和党も一斉に「雇用対策」を打ち出そうとしています。
大統領の方は少々派手な仕掛けで、8日の木曜日に上下両院の合同議会を招集して「雇用に関する演説」を行い全国へテレビ中継をすることになっています。そう言うと聞こえは良いのですが、実態は「本当は7日にやりたかったが共和党の大統領候補ディベートと重なるからダメ」ということでこの日になったのです。
また開始時刻についても「本当は夜の8時以降にやりたかったが、NFLの開幕戦が8時半からなのでダメ」ということで、「異例」の東部時間午後7時からの大統領演説というスケジュールになっています。これでは、西海岸の人はまだ午後4時で勤務中か、帰宅ラッシュの最中ということになります。
それはともかく、オバマ演説の内容は「追加の公共投資+所得減税+職業訓練」ということになるようです。これに対して、共和党側では、例えば大統領候補のミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事は6日の火曜日にメディア向けに「雇用対策」を発表しているのですが、こちらは「キャピタルゲインや配当課税の廃止+法人減税+規制緩和+医療保険改革の停止で雇用時のコスト低減」と確かに「共和党的」な内容になっています。
この2つの路線は並べてみれば確かに「全く違い」ます。まして、お互いに非難を始めてそれがエキサイトしてくるようだと立派な論戦になってしまいます。その結果として「どちらかを選択すれば良い」という気分にさせられてしまうのですが、果たしてそうでしょうか?
私はこの両者の「雇用政策」はどちらも小手先のものであり、本質的な米国経済の好転や大規模な雇用創出という点では実効性は薄いと考えます。ただ、現在2011年の9月というのは、3年前のリーマン・ショック直後と比較すれば、(1)銀行の体力がほぼ回復した、(2)不動産価格がほぼ底に来ている、(3)民間も公共セクターも徹底的なリストラが一巡、という3点において状況は「はるかにまし」なのは間違いありません。
ですから、小手先の「政策」を実行したとしてもそれが上手く「自然反転」のトレンドに乗れば「効果」が出る可能性はゼロではないわけです。その点でも、オバマの政策も共和党の主張も同レベルでしょう。
ちなみに、雇用創出を難しくしている最大の原因は空洞化ですが、現時点で中国との貿易摩擦を真剣に戦おうというような、保護主義的な動きは双方ともに僅かです。オバマはあくまで競争力を競うという言い方ですし、共和党の候補については、今回のロムニーにしても「知的所有権の侵害などには毅然として臨む」という程度で、中国との間で本格的に保護主義的なバトルを戦うつもりはないようです。
そんな中で、やはりインパクトのあるのはQE3(量的緩和第3弾)でしょう。世界中に余剰資金を回してインフレの元凶だと言われ、QE2はかなり評判が悪いのは事実です。特に日本などは、超円高が短期的には固定化しており、正にその被害を被っている形です。ですが、このQE2というのは、どう考えても輸出型産業、グローバル化した産業では、アメリカ経済の数字改善に役立っているのです。QE2で足りなければQE3へと、連銀が踏み込む可能性はまだまだあると見ておかなければなりません。
その意味で、今週の「雇用政策バトル」は与野党どちらもパッとしない「痛み分け」になり、むしろ連銀が何かをやる上での「前座」ということなのかもしれません。
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