コラム

ドタバタ国民党を蹴散らす?台湾の3匹の子ブタ

2015年10月21日(水)15時00分

 2011年に私は台湾の新聞「旺報」のウェブサイトで漫画コラムの連載を始めた。当時、台湾ニュースを理解するためほとんど毎日台湾のテレビを見ていたが、ちょうど12年の初めは台湾総統選挙が行われる時期で、そのすべてのプロセスを関心を持って見守った。この総統選挙は国民党の馬英九と民進党の蔡英文が僅差で競り合い、最後は馬が得票率51・60%で得票率45・63%の蔡を振りきったが、敗戦を受けた蔡の演説は素晴らしかった。「台湾は反対の声が必要だし、チェック・アンド・バランスをする勢力も必要だ」と、彼女は語った。この話は私だけでなく多くの中国人を感動させ、台湾の民主主義へのあこがれが日に日に高まった。中国共産党の「勝てば官軍、負ければ賊軍」式の残酷な権力闘争と比べれば、敗れたとはいえ蔡には尊厳もあった。

 またたく間に4年が経過し、台湾ではまた総統選挙が近づいてきた。この4年の間に経済的な結びつきが強くなったことで、台湾の大陸化が一層進み、そのことが台湾の人々の抵抗感情を呼び起こして国民党の人気は地に落ちた。昨年の統一地方選挙で国民党は大敗し、青色陣営(編集部注:国民党の旗の色から同党勢力はこう呼ばれる)には敗北主義が充満した。総統選挙の最初の候補者登録で誰も名乗りを上げなかったほどだ。

 その中で、自ら進んで候補者に名乗り出たのが行政院副院長(副首相)で女性の洪秀柱だ。国民党はいったん党として洪の立候補を承認したが、世論調査での蔡の優位に加え、洪がたびたび党の政策と一致しない発言をしたことから、彼女の候補者としての適性が大きく疑問視されるようになった。国民党陣営は洪の「舌禍」と「『柱』を換えろ(編集部注:洪の名前の一部の「柱」と、候補者として党を支える「柱」の意味をかけた皮肉)」という要求に耐えきれず、ついに党主席の朱立倫を新たな候補者としてすげ換えた。しかし「朱に換えた」後も民進党の優勢は明らかで、最新の世論調査では蔡の支持率が46%なのに対して朱は29%しかない。

 11年の総統選挙で蔡は、資金力十分な国民党陣営に「小額寄付」のアイデアで対抗。支持する民衆は先を争って民進党の提供する子ブタの貯金箱を硬貨でいっぱいにし、それでも足りず紙幣を寄付した。この「3匹の子ブタ」は今回も民進党の選挙活動のシンボルになる。国民党が「柱」を「朱」に換えても(編集部注:中国語では「柱」も「朱」も発音が同じzhu)、恐らく蔡の3匹のかわいいい子ブタの威力にはかなわない(同:中国語でブタを表す「猪」の発音もzhu)。来年、中華民族で唯一の民主国家に選挙によって初の女性リーダーが誕生するだろう。

<次のページに中国語原文>

プロフィール

辣椒(ラージャオ、王立銘)

風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
今、あなたにオススメ
>
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story