Picture Power

【写真特集】自然を生きる動物たちの輝く瞬間を捉える

CAPTURING MOTHER NATURE

Photographs by Wildlife Photographer of the Year 2020

2020年11月07日(土)15時30分

<「自らの環境における動物」部門>『抱擁』セルゲイ・ゴルシュコフ(ロシア) Sergey Gorshkov/Wildlife Photographer of the Year

<動物が自然に溶け込む奇跡の瞬間は、自然の美しさを守る人間の責任を思い起こさせる>

極東ロシアの森の中、恍惚とした表情でマンシュウモミの古木に抱き付くアムールトラの雌。縄張りを示すために樹皮に頰を擦り付け、自身の匂いを残そうとしている。

ロシアのセルゲイ・ゴルシュコフによる『抱擁』と題されたこの作品は、56回目を迎えた野生生物写真コンテスト(ロンドンの自然史博物館が運営・審査)で今年の大賞に選ばれた。

カメラトラップ(自動撮影装置)を使い、11カ月かかったという。「唯一無二の光景だ。神秘的な森での親密な一瞬を見事に捉えている」と、審査委員長のロザムンド・キッドマン・コックスは評した。

極東ロシアは、絶滅危惧種のアムールトラの主要な生息地。幸い、保護活動のおかげで少しずつ個体数は増えており、審査員のティム・リトルウッドは『抱擁』がそうした希望を象徴していると感じたようだ。

「トラが自然に溶け込んだ素晴らしい光景が、私たちに希望をくれる。感動を与える写真の力により、私たちは自然界の美しさとそれを守るべき責任を思わされる」

同様に貴重な一瞬を捉えて各部門で1位となった作品を以下に紹介しよう。

【冒頭写真】<「自らの環境における動物」部門>『抱擁』セルゲイ・ゴルシュコフ(ロシア)
極東ロシア・ヒョウの森国立公園のアムールトラ。中国とロシアの国境近辺に生息し、北朝鮮にもわずかにいるとみられるアムールトラは、狩猟などにより20世紀に個体数が激減。だが近年は保護活動のおかげで500~600頭にまで回復しているようだ。ゴルシュコフはトラの匂いや体毛、尿などを手掛かりにカメラトラップを昨年1月に設置。思いどおりの写真が撮れたのは11月だった

ppnature02.jpg

Mogens Trolle/Wildlife Photographer of the Year

<「動物の肖像」部門>『ポーズ』モーエンス・トロール(デンマーク)
頭をわずかにかしげ、目を閉じる若いオスのテングザル。インドネシア・ボルネオ島のラブク湾テングザル保護区の餌場に来た彼は、瞑想するように数秒ポーズを取った。ボルネオと近隣の島のみに生息し、主に木の葉を餌にするテングザルは森林の減少で危機にさらされている。この印象的なポートレートは人間が霊長類を仲間として見直すきっかけになるだろうか


ppnature03.jpg

Jaime Culebras/Wildlife Photographer of the Year

<「行動:両生類と爬虫類」部門>『宙ぶらりんの命』ハイメ・クレブラス(スペイン)
クモを食べるグラスフロッグ。半透明のこのカエルを撮影しようとエクアドルに赴いたクレブラスは豪雨の中、4時間歩いてマンドゥリアク川保護区へ。カエルが見つからず諦めかけた時、枝にしがみつく1匹の姿が目に留まった。片手に傘とフラッシュ、片手にカメラを持ち、この瞬間を捉えた


ppnature04.jpg

Ripan Biswas/Wildlife Photographer of the Year

<「ポートフォリオ賞」部門>『最後の一口』リパン・ビスワス(インド)
インドの西ベンガル州の干上がった川床で、凶暴な2匹を捉えた組み写真の1枚。ハンミョウは地面、ツムギアリは樹上で生活するため普段はめったに遭遇しない。このときはアリの群れを狙い、後脚に食い付かれたハンミョウが大あごでアリを真っ二つに。だがアリの上体はそのまま残った


ppnature05.jpg

Gabriel Eisenband/Wildlife Photographer of the Year

<「植物と菌類」部門>『アウト・オブ・ザ・ブルー(思いがけなく)』ガブリエル・アイゼンバンド(コロンビア)
コロンビアのアンデス山脈にあるオリエンタル山脈の最高峰リタクバ・ブランコを、幽玄な青い光に満たされる日没後の「ブルーアワー」に撮影した。手前で黄色く輝いているのは、コロンビアにのみ咲くキク科の花だ。奇妙なほどの静寂のなか、アイゼンバンドは長時間露光で高山を流れる雲を捉えつつ、花はぶれずに撮影できたという

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パキスタンとアフガン、即時停戦に合意

ワールド

台湾国民党、新主席に鄭麗文氏 防衛費増額に反対

ビジネス

テスラ・ネットフリックス決算やCPIに注目=今週の

ワールド

米財務長官、中国副首相とマレーシアで会談へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「実は避けるべき」一品とは?
  • 4
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 5
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 6
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 7
    自重筋トレの王者「マッスルアップ」とは?...瞬発力…
  • 8
    「中国は危険」から「中国かっこいい」へ──ベトナム…
  • 9
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 10
    疲れたとき「心身ともにゆっくり休む」は逆効果?...…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 9
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 10
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story