コラム

日本メディアが報じない、本当は怖い米中間選挙の大変動(パックン)

2022年11月05日(土)18時34分

昨年の議会襲撃を超える混乱は避けたいが…(ライトアップされるホワイトハウス、2018年) Kiyoshi Tanno/iStock.

<支持する候補が当選しない...ということ以前に今度の米中間選挙には民主主義を根底から覆す危険が迫っている>

今年は珍しいことが起きている。1年の中で一番怖い日が10月31日ではなく11月8日なのだ。つまり、不思議なことにハロウィーンよりもアメリカの中間選挙の日が明らかにホラーに満ちている。

自分と違う政治理念を持つ党が過半数の議席を勝ち取ったり、好みと違う人が大統領になったりすることはもちろん、普通の選挙につきものだ。しかし、今回はそんな話ではない。今回は政策の違いでもなく、誰がアメリカの象徴かを選ぶときの良し悪しの話でもない。取り返しのつかない、国としての別次元な変化への恐怖だ。

一言でいうと、今回の選挙はアメリカの民主主義の終わりの始まりとなり得るのだ。 

そもそもアメリカの選挙は野党・共和党が勝ちやすい状態になっている。大統領選の選挙人制度や各州に2議席を与える連邦議会上院の制度など、選挙制度の構造的な要素が共和党に有利なのだ。その上、共和党は地方レベルで、選挙区割りの変更や都市部に住んでいる人やマイノリティなど、民主党支持者が多い層への投票抑制策といった狡猾な手段でさらにその優位性を拡張してきた。

そのため、大統選でも上下院の議会選でも、また州によっては州議会選でも、共和党は過半数の票を取らなくても勝てる。すなわち民主党より少ない票数で大統領候補を当選させ、過半数の議席が取れる。

「選挙否定派」が選挙を席巻

2000年や2016年の大統領選でも、2012年の下院選でも、2016年の上院選でも、共和党は得票率が少ないのに選挙を制している。つまり選挙に(実質的に)負けながら、選挙に勝っている! 日本で「負けるが勝ち」とよく聞くけど、こういうことなんだろうか?

こんな非合理的な制度と共和党の卑劣なやり方に、僕も含めて多くの人はイライラと怒りを以前から感じている。しかし、こんなに恐怖を感じるのは今回が初めて。なぜなら、次の段階に進むと「ひずみ」が「崩壊」に変わるかもしれないから。

というのは、今回の中間選挙に出馬する共和党の候補の半分以上が2020年の大統領選の結果を認めないか懐疑的な、いわゆるelection denier(選挙否定派)なのだ。ワシントン・ポスト紙のまとめによると、選挙否定派の候補が全国で291人もいて、その中の171人がほぼ確実に当選する見込み。さらに48人が勝つ可能性があるとも予測している。

共和党に風が吹いた場合、約220人の選挙否定派が当選するのだ。ハロウィーン・パレードなら地味な人数だが、彼らは街を練り歩くのではなく、権力の座に座り込む。さらにお化けなどと違って、彼らは実在する。だから怖い。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

英仏、 米国のホルムズ封鎖に不参加 多国間枠組み策

ワールド

米のホルムズ海峡封鎖が開始期限、イラン報復示唆 原

ワールド

原油現物が最高値更新、150ドルに迫る 米のホルム

ワールド

米イラン停戦「非常に脆弱」、中国外相 対立激化への
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事の新シナリオ
特集:台湾有事の新シナリオ
2026年4月21日号(4/14発売)

地域紛争の「大前提」を変えた米・イラン戦争が台湾侵攻の展開に及ぼす影響をシミュレーション

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本は「イノベーションのやり方」を忘れた...ホンダ「EV撤退」が示す、日本が失った力の正体
  • 2
    「いい加減にして...」ケンダル・ジェンナーの「目のやり場に困る」姿にネット騒然
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相…
  • 5
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 6
    トランプがまた暴走?「イラン海上封鎖」の勝算
  • 7
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 8
    「違法レベル...」ゼンデイヤの「完全に透けて見える…
  • 9
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 10
    トランプ政権に逆風...「イラン戦争でインフレ再燃」…
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 8
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 9
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 10
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story