コラム

日本メディアが報じない、本当は怖い米中間選挙の大変動(パックン)

2022年11月05日(土)18時34分

稲川淳二さんに伝えてもらおう

選挙否定派は、何十もの裁判と調査で正当性が確実に立証されている20年大統領選の結果を認めない上、暴徒が力によって選挙結果を変えようとした昨年の連邦議会議事堂への襲撃も擁護、正当化する。さらに、今回の中間選挙で共和党が負けた場合、選挙結果を認めない! と公言している候補もいる。彼らは真実にも民主主義にも全くこだわりがないのだ。

そんな選挙否定派が中間選挙に勝ち、複数の州の知事や副知事、州務長官、司法長官、そして連邦両院の議員という重要なポジションに就く確率がとても高い。つまり今後、投票の管理のほか、選挙を運営する人、選挙人を決める人、結果の承認をする人が、選挙否定派になる。自分たちにさらに有利な選挙制度を作った上、選挙の結果が気に入らなかった場合、その結果自体を変えることもいとわない。しかも、国民がそれを反対しても、止める手段がなくなるのだ。

名作映画『ハロウィン』は、新しい工夫でホラー映画に地殻変動並みの変革を起こした。それは、殺人鬼ブギーマンを「不死身」にしたこと。主人公はどう頑張っても彼を殺せない。同様に、中間選挙の結果次第で共和党は今後の選挙で何があっても負けない「不死身」になってしまうかもしれない。死んだはずなのにまだ動く「ゾンビ議員」や「ジェイソン知事」が続々登場してしまうってこと。

大げさに思われるかもしれないが、これぐらい恐怖に駆られているアメリカ人も多い。僕がこんなに熱くなって警告しているのは、こんなに怖い展開になる可能性があるのに、日本の報道からそれが伝わってこないからだ。どうにかこの危険性、恐怖を日本の皆さんに知っていただきたい。今後、アメリカの選挙ニュースは稲川淳二さんに読んでもらえばいいかも......。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story