コラム

「生娘」発言はアウトだけど、ツッコミ不在の社会も危険だ(パックン)

2022年04月23日(土)17時00分

不適切発言で大手牛丼チェーンの常務は解任された Mirko Kuzmanovic/iStock.

<許されざる「生娘」発言の問題点を漫才にしてみました。でも実社会ではツッコミ役が不在なので、過剰な「言葉ポリス」は慎みたいところです>

社会人向けセミナーで差別的な表現を発してしまった、大手牛丼チェーンの常務が袋叩きにされたね。セミナーを主催する大学も、勤務先の企業も謝罪し、常務は解任された

今の日本では決して許されるような発言ではなかった。僕もテレビで時代にそぐわない、性差別にもつながり得る発言として批判もした。だが、非公開の場で40人ぐらいを前にした話がここまでの騒動を起こすことに僕は驚いている。一般人より高い倫理観を求められる公務員の懲戒基準を見ると、免職は放火、殺人、死亡事故などのような大罪の場合に科される、とっても重い罰則だ。

解任された常務は、有名な企業や大学の名を背負っているとはいえ、公務員でも、ニュースキャスターでもないし、政治家でもない。ましてやダイバーシティを目標とする東京五輪の組織委員会の会長じゃない(あの時の大騒ぎは妥当だった気がする)。許されない発言とはいえ、今回の社会的制裁は果たして適切だっただろうか。

漫才にしたらどうなる?

元常務はおそらく挑発的な言葉遣いで場を盛り上げようとしたと推測される。教室では笑いが起こっていたという報道もある。しかし、本人は自分と受講生の間に常識や価値観の齟齬があったことに気付いていなかったようだ。つまり、(知識、意識、教養、気遣いなどが足りなかったとはいえ)確信犯ではなかったかもしれない。事件ではなく、事故だったかもしれない。

芸人として、そうした落とし穴は常に意識している。僕もウケを狙い、決してテレビで見せない「黒パックン」を舞台で演じて「観客の常識」とのギャップをもてあそぶこともある。一線を超えることもあるが、その時に便利、というかその時にだけ便利なのは相方のマックン。彼がツッコミを入れて、ギリギリアウトの発言をその場で訂正してくれるおかげで「問題発言」もネタとして成立するのだ。

もしかしたら、常務もボケたつもりだったが、ツッコミがいないため、受講生が真に受けてしまった可能性もある。隣にツッコミがいれば成り立ったかもしれない。

ここで、そんな妄想に基づいた漫才を見ていただこう! まず、忘年会の余興のような感じで、(元)常務は会社の同僚とコンビを組んで......

常務: ジョームです!
専務: センムです! 2人合わせて
2人: 「ヨシギュー」で~す!

と、元気よく教室に登場する。コンビ名を名乗るときは、昔のキャイーンさんのようにポーズを決める(僕は古い芸人だから、こんなイメージになる)。そして漫才が始まる:

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、イランから「かなり早期」に撤退へ NA

ワールド

イラン新指導者が停戦要請、ホルムズ海峡開放されれば

ビジネス

米ADP民間雇用、3月予想上回る6.2万人増 前月

ワールド

ロシア 、 ドンバス地域のルハンスク州完全掌握と発
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 4
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 5
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 6
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 7
    北京に代わる新都市構想は絵に描いた餅のまま...大幅…
  • 8
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 9
    「え、なんで?」フライト中に操縦席の窓が覆われて…
  • 10
    韓国・週4.5日労働制が問いかけるもの ──「月曜病」解…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story