コラム

久しぶりのトランプ選挙「醜会」で分かったこと

2020年06月24日(水)17時00分

安心してください、トランプはマスクを着けて……いない! Leah Millis-REUTERS

<3カ月ぶりに開催した選挙集会でも、嘘と個人攻撃と自慢話ばかりだったトランプ大統領>

「Good morning, Mr. President、新型コロナウイルス関連の報告です。230万人以上が感染し、12万人以上が亡くなっている今でも、全米の感染者数も死亡者数もまだ右肩あがりです。特に、都会部が落ち着いてきているところ、田舎で感染拡大が目立っています。例えばオクラホマ州だと、1日当たりの平均新規感染者数はこの3週間で5倍も跳ね上がっているのです。どう対応しましょうか?」

「分かった! 何千ものオクラホマ人を密閉空間に密集させ、近距離で大声を出し合ってもらおう!」

「ええと......マスクは?」

「着けるもんか!」
 
「あ、はい。しかし、大統領、タイミングが微妙ですね。ジョージ・フロイドやブリオナ・テイラー、レイシャード・ブルックスなど、丸腰の黒人が警察に殺害される事件が相次ぎ、抗議デモは今も続いています。そんなときに、大勢の白人が楽しそうにワイワイするような集会を開けば無神経だと批判されかねません。やるなら、特に日時と場所を慎重に選ばないといけません。例えば、奴隷解放を祝う6月19日はJuneteenthといって、黒人にとってとても大切な日だし、オクラホマ州にはアメリカ史上最悪の黒人大虐殺の現場となったタルサ市があります。例えば、その日にそこでやってしまったら......。」

「絶対に盛り上がる! よっし、決定だ!」

「え? あっ......。ん。」

妄想にすぎないが、110日ぶりに行われたトランプの選挙集会の企画会議はきっとこんな話だっただろう。結果を見れば、そう推測されて当然だ。一番やってはいけないことを一番やってはいけないところで、一番やってはいけないタイミングでやることにしたから。結局、集会予定の発表後に反発が来て、「黒人の友達からアドバイスを受けて」という口実で開催日を1日後ろにずらしたけど。

もちろん、トランプ1人のせいではない。おそらく空想の「黒人の友達」以外にも実存のアドバイザーやスピーチライターがついているのに、合同作業で作り上げたものが「チーム鈍感力」の傑作だった。「配慮」のつもりなのか、なぜか以下のような案も通ってしまったのだ。

<参考記事:解任されたボルトンがトランプに反撃 暴露本の破壊力は大統領選を左右する?

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

独経済団体、半数が26年の人員削減を予想 経済危機

ワールド

中国軍、台湾周辺で実弾射撃伴う演習開始 港湾など封

ビジネス

韓国クーパン、顧客情報大量流出で11.8億ドルの補

ワールド

尹前大統領の妻、金品見返りに国政介入 韓国特別検が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story