最新記事

トランプ政権

解任されたボルトンがトランプに反撃 暴露本の破壊力は大統領選を左右する?

Bolton’s Bombshell Tell-All Book

2020年6月23日(火)13時40分
ロビー・グレイマー、ジャック・デッチ

ボルトンの回顧録は11月の大統領選にインパクトを与えるのか JONATHAN ERNST-REUTERS

<前大統領補佐官の回顧録では、トランプが再選を確実にするために他国政府に働きかけ、G20大阪サミットでは習近平に協力を懇願していたことも暴露されている>

議会による弾劾裁判にまで発展したウクライナ疑惑は、氷山の一角にすぎなかった。ドナルド・トランプ米大統領が再選を目指して外国政府に行った工作は、はるかに大掛かりなものだった──。

トランプ政権で大統領補佐官(国家安全保障担当)を務め、大統領と衝突して解任されたジョン・ボルトンの新著『それが起きた部屋(The Room Where It Happened)』(6月23日発売予定)は、トランプが再選を確実にするため外国政府に協力を求めていたと書いている。

本書でボルトンは、トランプが中国の習近平(シー・チンピン)国家主席に対し、大統領選で接戦が予想される激戦州の農家の利益になるような貿易合意を締結することで自らの再選を確実にするよう依頼したと主張する。

6月17日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)への寄稿で、ボルトンは改めてトランプを糾弾した。その前日、ホワイトハウスは「国家安全保障に損害を与える」として出版差し止めを求めて提訴している。そのため本書が現状のまま出版されるかどうかはこの記事を書いている時点では不明だが、報道されている内容で世に出れば、トランプの再選戦略に大きな傷をもたらすことになる。(編集部注:6月20日、首都ワシントンの連邦地裁はトランプ政権による出版差し止めの訴えを棄却。『それが起きた部屋』は予定通り、23日に発売される予定)

ボルトンは592ページに及ぶ新著の大半を、外交における大統領の悪行を告発することに割いているようだ。いくつかの書評記事によれば、トルコ国営のハルク銀行と中国の通信機器大手の中興通訊(ZTE)に関する疑惑捜査を早めに切り上げようとすることで、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領と習のそれぞれに取り入ろうとしたと書かれているという。

ウイグル人弾圧も容認

新著によれば、トランプのそうした動きの大半は自身の再選のためだった。「私の在任中にトランプが下した重要な決断に、再選の策略に関係のないものを見つけ出すのは困難だ」と、ボルトンはWSJに書いている。

大統領史の専門家からは、トランプのように国の政策と個人の政治的利益を混同するようなケースは前例がないという声が聞こえる。「腐敗した大統領は過去にもいた」と、著名な歴史家のジョゼフ・エリスは言う。「共和党の大統領はカネ、民主党はセックスに絡んで腐敗する傾向がある。しかし、トランプのような鉄面皮な振る舞いをする大統領は前代未聞だ」

<参考記事>大丈夫かトランプ 大統領の精神状態を疑う声が噴出
<参考記事>なぜトランプは平気で「ウソ」をつけるか──ヒトラーとの対比から

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:なぜ欧州は年金制度の「ブラックホール」と向き

ワールド

過度な為替変動に警戒、リスク監視が重要=加藤財務相

ワールド

アングル:ベトナムで対中感情が軟化、SNSの影響強

ビジネス

S&P、フランスを「Aプラス」に格下げ 財政再建遅
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みんなそうじゃないの?」 投稿した写真が話題に
  • 4
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 5
    大学生が「第3の労働力」に...物価高でバイト率、過…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「リンゴの生産量」が多い国…
  • 7
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 8
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 5
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中