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解任されたボルトンがトランプに反撃 暴露本の破壊力は大統領選を左右する?

Bolton’s Bombshell Tell-All Book

2020年6月23日(火)13時40分
ロビー・グレイマー、ジャック・デッチ

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大阪で握手するトランプと習 KEVIN LAMARQUE-REUTERS

ボルトンによれば、トランプは対イラン制裁違反を摘発されたトルコのハルク銀行の捜査を止めるよう、ニューヨーク州連邦地方裁判所に介入すると約束した。ワシントン・ポスト紙による新著の引用によると、「トランプは、対処するとエルドアンに伝えた。(ニューヨーク州の)南部地区連邦地裁にはオバマ政権に任命された検事たちがいるが、自分が指名した顔触れにすげ替えれば問題は解消すると説明した」と、ボルトンは書いている。

昨年6月には大阪でのG20サミットで習との首脳会談に臨んだ際、再選への協力を直接求めたという。「トランプは驚いたことに、大統領選に話を移した。中国の経済力に言及し、大統領選での勝利を確実にしてほしいと懇願した」と、ボルトンはWSJに書いた。「彼は選挙における農家の票と、中国が大豆と小麦の購入を増やすことの重要性を強調した」

ボルトンによれば、トランプは中国による少数民族ウイグル人の弾圧も容認した。新疆ウイグル自治区で100万人以上のウイグル人が収容所生活を送る実態を、マイク・ポンペオ米国務長官は「世紀の汚点」と呼んでいるのだが。

「通訳だけが同席した場で習がトランプに新疆ウイグル自治区に収容所を建設した理由を説明したところ、アメリカ側の通訳によるとトランプは建設を進めるべきだと応えた。トランプはそれが正しい選択だと考えていた」と、ボルトンはWSJに書いている。

さらにボルトンは、トランプが大阪での習との会談で、民主党議員は中国に「非常に強い敵意」を抱いていると主張したと指摘している。

一方でトランプは、中国に対して自分に有利に動くよう公の場で求めたこともある。昨年10月、ホワイトハウスでの会見中に中国政府に対し、自身が再選を目指す大統領選での民主党候補になるとみられたジョー・バイデン前副大統領について、息子が中国で商取引をしていたことから中国政府はバイデン親子を調査すべきだと主張した。

影響はどこまで広がる?

トランプはこれ以前に、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領にバイデンの調査に乗り出すよう圧力をかけて同国政府への軍事支援を保留にしたとされる疑いで弾劾訴追された。だが、今年2月に無罪評決を受けた。

ボルトンは本書で、ウクライナへの働き掛けを取り上げてトランプの弾劾を求めた民主党の下院議員らへの軽蔑をあらわにしている。ただしこれは、調査対象をウクライナ疑惑に限定し、政治的な理由から事を急ぎ過ぎたためだ。ボルトンによれば民主党側の過ちは、トルコのハルク銀行や中国のZTEの調査など他の疑惑にトランプが介入しようとしたとされる件などを考慮しなかったことにある。

<参考記事>大丈夫かトランプ 大統領の精神状態を疑う声が噴出
<参考記事>なぜトランプは平気で「ウソ」をつけるか──ヒトラーとの対比から

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