コラム

日本のコロナ対策は独特だけど、僕は希望を持ちたい(パックン)

2020年05月01日(金)13時45分

嘘ばかりのトランプと違い、安倍さんは正しい情報をきちんと活舌悪く伝えている KIM KYUNG-HOON-REUTERS

<ハードでもソフトでもない日本の封じ込め策。自粛の「お願い」だけなのは、権力の問題? それともリーダーシップの問題? いろいろあったが成功してほしい、いい国だから――。本誌「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集より>

日本の独特なやり方に、世界の人はびっくりする。え? 口契約だけで仕事が成り立つ!? 宗教に頼らず倫理観を国民に植え付けられる!? 魚に火を通さずに食える!? COVID-19、新型コロナウイルス感染症に対するアプローチも驚くほど独特だ。

2020050512issue_cover_200.pngコロナ感染を防いだ、もしくは封じ込めた、世界の「成功例」と比べてみよう。成功モデルは主に2つ見られる。1つ目は都市全体を封鎖したり、広範囲で多少乱暴な手段を用いるスタイル。もう1つは、個人の動きを監視したり、小規模の感染予防を徹底するスタイル。ハードとソフト。荒々しいときめ細かい。「木綿」と「絹」とでも言おう。

ハードの代表例は新型コロナの発祥地でもある中国の武漢(12月に謎の感染症が発覚したときに、ウイルスより先に「情報」を封じ込めた中国政府の過失が大きいことは言うまでもないが、取りあえず言っておこう)。武漢市は交通網の封鎖や市民の外出禁止のほか、人口約1100万人の都市全体からの出入りも禁止した。超厳格なロックダウン(都市封鎖)だ。でも、2カ月弱で武漢は「新規感染者ゼロ」を発表し、今は封鎖を解除し、経済活動も徐々に再開している。失敗からの成功だ。

ソフトの例としては台湾が模範となる。早い段階で中国全土からの入国を禁止し、マスクの製造や配給を始めた。さらに入国管理と国民健康保険のデータベースを統合し、国民一人一人の外国渡航歴と健康状態を照らし合わせてリスクの高い人を見いだした。また、携帯アプリで自宅待機中の人を監視するシステムを導入した。こういった対策で経済活動をほとんど止めなかった台湾はいまだに感染者数を500人弱に抑えている。失敗なしの成功例だ!

ほかにもきめ細かい対策例を見てみよう。韓国では1日に10万個以上の検査キットを製造し、「ドライブスルー検査」を実施した。中国・南京では地下鉄の改札やデパートの入り口などで道行く人の体温を測る検温ステーションを設置した。シンガポールでは市民の携帯の位置情報を集め、感染者との接触を追跡して、個人にアラートを出すアプリを開発した。ちなみに、おそらくシンガポールではパソコンを使えない大臣をサイバーセキュリティ担当にしたりしないはず。いい考えかも!

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ワールド

台湾総統選、中国に「多様な干渉手段」 国家安全局長

ビジネス

午後3時のドルは149円前半で小動き、介入警戒感で

ワールド

ウクライナの農産物輸出、9月は前月比10%減の21

ビジネス

需給ギャップ、4―6月期は-0.07% プラス転換

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:2023年の大谷翔平

特集:2023年の大谷翔平

2023年10月10日/2023年10月17日号(10/ 3発売)

WBCは劇的優勝、ケガで無念の離脱、そして日本人初本塁打王へ。激動の大谷イヤーを現地発の記事と写真で振り返る

メールマガジンのご登録はこちらから。

人気ランキング

  • 1

    【独自】祝ホームラン王!「最強の戦友」マイク・トラウトに聞く、大谷翔平の素顔

  • 2

    複数のドローンがロシア西部「ミサイル工場」を攻撃、その閃光と爆音を捉えた映像

  • 3

    メドベージェフが発した核より現実的で恐しい戦線拡大の脅し

  • 4

    中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗…

  • 5

    ウクライナ軍の捕虜になったロシア軍少佐...取り調べ…

  • 6

    ロシア軍スホーイ戦闘機など4機ほぼ同時に「撃墜」され…

  • 7

    中国不動産バブル崩壊で地方役人は戦々恐々

  • 8

    中国・秦剛前外相の失脚は本当に女性関係のせいだっ…

  • 9

    処理水批判の中国から日本に観光客は来て...いる? …

  • 10

    台湾初「国産潜水艦」がついに進水...中国への抑止力…

  • 1

    黒海艦隊「提督」の軽過ぎた「戦死」の裏に何があったのか

  • 2

    【独自】祝ホームラン王!「最強の戦友」マイク・トラウトに聞く、大谷翔平の素顔

  • 3

    中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗組員全員死亡説も

  • 4

    ウクライナ軍の捕虜になったロシア軍少佐...取り調べ…

  • 5

    本物のプーチンなら「あり得ない」仕草......ビデオ…

  • 6

    エリザベス女王も大絶賛した、キャサリン妃の「美髪…

  • 7

    ワグネル傭兵が搭乗か? マリの空港で大型輸送機が…

  • 8

    複数のドローンがロシア西部「ミサイル工場」を攻撃…

  • 9

    NATO加盟を断念すれば領土はウクライナに返す──ロシ…

  • 10

    ロシア軍スホーイ戦闘機など4機ほぼ同時に「撃墜」され…

  • 1

    黒海艦隊「提督」の軽過ぎた「戦死」の裏に何があったのか

  • 2

    イーロン・マスクからスターリンクを買収することに決めました(パックン)

  • 3

    【独自】祝ホームラン王!「最強の戦友」マイク・トラウトに聞く、大谷翔平の素顔

  • 4

    中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗…

  • 5

    コンプライアンス専門家が読み解く、ジャニーズ事務…

  • 6

    「児童ポルノだ」「未成年なのに」 韓国の大人気女性…

  • 7

    <動画>ウクライナのために戦うアメリカ人志願兵部…

  • 8

    「これが現代の戦争だ」 数千ドルのドローンが、ロシ…

  • 9

    「この国の恥だ!」 インドで暴徒が女性を裸にし、街…

  • 10

    ウクライナ軍の捕虜になったロシア軍少佐...取り調べ…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story