コラム

スター・ウォーズの球形ロボトイも作ったスフィロ社の教育向けロボット

2015年11月26日(木)16時00分

スフィロ社は、『スター・ウォーズ』の新キャラクターの球形ロボ、BB-8のトイバージョン開発も手がけた。

 アメリカの初頭・中等教育現場では、今、STEM(ステム)あるいはSTEAM(スティーム)と呼ばれる教育カテゴリーが注目されている。Science(科学)、Technology(技術)、Engeneering(工学)、Mathematics(数学)という理系4分野の頭文字から名付けられたものがSTEMであり、STEAMではそれに文系のArt(芸術)が加わるのだが、個人的には、後者のほうがあるべき姿ではないかと考えている。

 余談だが、英単語のStemには「(植物などの)茎や幹」という意味があり、Steamは、かつての産業革命の原動力だった「蒸気機関」をイメージさせる。そうした点からも、なかなか巧みな命名といえるだろう。

 いずれにしてもオバマ大統領は、それらの科目を統合的に扱う教育を推し進めることが今後の国づくりの礎となると考えており、これを受けて現場でも様々な取り組みが行われるようになった。中でも注目されるのが、12月公開の映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の新キャラクターとして登場するドロイド、BB-8のトイバージョン開発も手がけたスフィロ社の動きだ。


 同社は、BB-8のベースでもある球形ロボット、Spheroを開発・販売するかたわら、独自のSPRK(スパーク)というカリキュラムを個人や教育機関に無償で公開することにより、ロボティクスを軸にしたSTEM/STEAM的な学習法を提案してきた経験を持つ。SPRKとは、Schools(学校)、Parents(親)、Robots(ロボット)、Kids(子ども)の頭文字を組みわせた造語であり、Spheroのプログラミングを通じ、画面内だけでなく実体のあるモノを制御して様々な教科の支援を行なうプロジェクト名称となっている。

 ノーマルのSpheroと既存のプログラミングアプリを使ったSPRKによるレッスンは、世界の12,000校に及ぶ学校で採用されており、この10月にはホワイトハウスにおいて、複数のSpheroを太陽系の惑星に見立てて軌道上を周回させるデモも披露された。このSpheroによる太陽系のシミュレーションは、元々ウィスコンシン州のスアミコ小学校の3年生たちが行ったプログラミング実習をベースにしており、適切なツールが子どもたちの創造性を伸ばすことの好例といえる。

4Distance.jpgSpheroとプログラミングアプリを使ったレッスンは世界の12,000校に及ぶ学校で採用されている。

 スフィロ社は、SPRKプロジェクトをさらに推進する上で、内部のメカニズムが目に見えるように筐体を透明化したSphero SPRKエディションを開発。併せて、ブロックを並べるようなビジュアル環境でSpheroを制御でき、それを一般的な文字ベースのプログラムに変換して表示することも可能なSPRKアプリもリリースした。

2.blockprogram_iPad.PNGiPadでブロックを並べるようにSpheroを制御できる。

3.textbasedcode_iPad.PNGそれを一般的な文字ベースのプログラムに変換して表示。


 このSphero SPRKエディションとSPRKアプリを利用した教育は、日本でも徐々に注目され始めており、先ごろ、義務教育の公立校として初めて茨城県古河市の大和田小学校において公開授業も行われた

 SpheroやSphero SPRKエディションは、人型ロボットのように高度なことはできず、単に転がって移動するボールが自動化されただけの製品に見える。しかし、自分も子ども時代に単純な丸いガラス玉に過ぎないビー玉を使った様々な遊び方を考え出したように、そのシンプルさの中にこそ無限の可能性が隠れているのである。

プロフィール

大谷和利

テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー、NPO法人MOSA副会長。アップル、テクノロジー、デザイン、自転車などを中心に執筆活動を行い、商品開発のコンサルティングも手がける。近著に「成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか」(現代ビジネスブック)「ICTことば辞典:250の重要キーワード」(共著・三省堂)、「東京モノ作りスペース巡り」(共著・カラーズ)。監修書に「ビジュアルシフト」(宣伝会議)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米の日鉄投資計画承認、日米の経済関係強化につながる

ワールド

米空母、南シナ海から西進 中東情勢緊迫化

ビジネス

ECB、政策の柔軟性維持すべき 不確実性高い=独連

ワールド

韓国、対米通商交渉で作業部会立ち上げ 戦略立案へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story