コラム

私は油断していた......「ずっと寝たきり」を警告された新型コロナ感染者の後遺症体験記

2022年05月02日(月)09時23分
後遺症

今も重症化に苦しむ患者は世界中に多くいる(米オハイオ州、今年1月)Shannon Stapleton-REUTERS

<ロシアのウクライナ侵攻で新型コロナのパンデミックは忘れられ、「弱毒化」の情報から妙な安心感が広がっている。だが、この感染症は決して「ただの風邪」ではない。感染後2カ月経ってなお後遺症が残る記者の体験記>

ウクライナ侵略や知床遊覧船の事故が紙面やタイムラインを埋めるようになってからというもの、すっかりコロナのニュースが霞んでしまった。別にウイルスが消えたわけでもないのに、コロナが収束しつつあるような錯覚すら覚える。実際、パンデミックが始まって以降、東京は3年ぶりに行動制限なしのゴールデンウィークを過ごすことになった。都内の感染者数は相変わらず数千人単位なのだが、それも見慣れてしまった。こうして世の中が「ウィズコロナ」へと舵を切りつつあるなか、私はコロナに感染した。感染から2カ月経った現在も、後遺症が残っている状態だ。

誰かの役に立つかもしれないので、私の感染経験を、時系列に沿って説明してみたい。というのも、感染者の体験談はネット上たくさん転がっているようでいて、意外なほど少ないのだ。そのなかで参考になったのは、共同通信記者によるこちらの記事。多くのブログ記事やツイッターの投稿は、情報として断片的すぎるものや主観が強すぎるものが目立ち、参考にしづらい。特に、感染者の年齢や性別、居住地、感染時期といった肝心な情報が抜け落ちていることが多いのだ。

はじめに断っておくが、私には医学的知識はない。これから記述することは、私個人が経験して感じた体験談に過ぎず、すべては「個人の感想です」という内容だ。私は東京都新宿区在住の40歳男性で、職業はライター。173センチ62キロ。持病はなく、普段から筋トレやジョギングなど適度な運動を心がけており、健康維持には人並み以上に気をつけていた。

身体に異変を感じ始めたのは、2月26日の夜。喉に何かが突っかかるような違和感があり、嫌な予感がした。そういえば、この3日前に仕事がひと段落して心身の緊張が解け、注意力が散漫になっていた。こういう時は体調を崩さないよう気をつけねばと思っていたのに、まんまとやられてしまった。

感染源として思い当たったのは、2月22日に知人に会合に誘われ、1時間半ほど顔を出してしまったこと。都内はまん延防止期間中だったが、営業している居酒屋や飲み歩いている人は少なくなかった。だが、同じ場面でコロナに感染したのは私だけで、他の人々は大丈夫だった。感染源として疑わしいとは思いつつも、いまだに確証はない。

異変を感じた2日後の28日夜には、仕事関係者との会合があった。当日も多少だるい感じがしたものの、キャンセルするほどではないと思い、参加してしまった。今思うと、この選択が悔やまれる。

プロフィール

西谷 格

(にしたに・ただす)
ライター。1981年、神奈川県生まれ。早稲田大学社会科学部卒。地方紙「新潟日報」記者を経てフリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポートした。現在は大分県別府市在住。主な著書に『ルポ 中国「潜入バイト」日記』 (小学館新書)、『ルポ デジタルチャイナ体験記』(PHPビジネス新書)、『香港少年燃ゆ』(小学館)、『一九八四+四〇 ウイグル潜行』(小学館)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

IMF、日本の財政措置を評価 財政赤字への影響は限

ワールド

プーチン氏が元スパイ暗殺作戦承認、英の調査委が結論

ワールド

プーチン氏、インドを国賓訪問 モディ氏と貿易やエネ

ビジネス

米製造業新規受注、9月は前月比0.2%増 関税影響
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 6
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 7
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 8
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 9
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 10
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 10
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story