コラム

フジテレビ問題の根底にある、「セクハラを訴える人間=無能」という平成の常識

2025年04月03日(木)09時53分
フジテレビ

フジテレビと「古い日本」は変われるのか? Piotr Piatrouski/Shutterstock

<フジテレビの一連の問題について、第三者委員会が調査報告書を発表した。フジテレビと中居正広の共犯的な関係や、被害女性にどこまでも冷たい上層部の言動に驚きや失望の声が広がっている。だが、日本企業で働く人々は皆、つい最近までフジ上層部と同じ考えをしていたではないか――>

中居正広の起こした事件は、氷山の一角に過ぎないのだろう。これまで何十年もの間、私たちの知らないところで、多くの芸能人やテレビマンが中居正広と同様の行為を繰り返してきたと類推せざるを得ない。

テレビ局だけではなく、日本社会のあらゆる業界内で多かれ少なかれ似たようなことが起きてきたに違いない。すなわち、立場の弱い者が性暴力を振るわれ、周囲は誰も助けようとせず、泣き寝入りを強いられるという構造だ。

先に断っておきたいのだが、私は正直、フェミニズムという言葉が好きではない。語義が広くて分かりにくいというだけでなく、何か説教をされそうなイメージがあり、聞いた瞬間に身構えてしまう。ちなみに、中国語ではフェミニズムを「女権主義」、フェミニズム運動を「女権運動」と訳す。こちらのほうが、ずっとよく伝わる。

「女性」という言葉にも胡散臭いものを感じることが多い。文脈によるが、「女」「女子」という言葉を一律に使用禁止として「女性」と言い換えるのは、思考停止でありナンセンスと思っている。女湯は女湯のまま、女子トイレは女子トイレ、女優は女優で良いではないか。

でも、そんな私でも、日本社会で女たちがずっといじめられ、見下されてきたことだけはよく分かっている。本稿では部分的に「女」という言葉を使わせて頂く。そのほうが、届けるべき人に言葉が届くと思うからだ。

プロフィール

西谷 格

(にしたに・ただす)
ライター。1981年、神奈川県生まれ。早稲田大学社会科学部卒。地方紙「新潟日報」記者を経てフリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポートした。現在は大分県別府市在住。主な著書に『ルポ 中国「潜入バイト」日記』 (小学館新書)、『ルポ デジタルチャイナ体験記』(PHPビジネス新書)、『香港少年燃ゆ』(小学館)、『一九八四+四〇 ウイグル潜行』(小学館)など。

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