最新記事
シリーズ日本再発見

「なぜ外国人観光客は日本の文化を勉強しないのか」と聞かれたクールジャパン専門家は...

2023年01月13日(金)15時35分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

何を求めているのか耳を傾ける

この種の過度に規範的な考えについて私が一番気になるのは、「外国人はこうあるべきだ」という一人の人間の思い込みが現実を上回ってしまう可能性があることです。

言い換えれば、英語ができなくても、外国人を受け入れる上で大きな問題にはならないと思うのです。しかし、外国人が実際には望んでいないものを望んでいると思い込むと、大きな問題が生じます。

例えば、あるお寺に行った時、突然外国人のお客さんが訪ねて来たことがありました。僧侶たちは彼らにお茶を出そうとしましたが、私は「お茶を飲むかどうか、まずお客さんに聞くので、待ってください」と言いました。僧侶たちは「お茶を欲しがらない人なんているのだろうか」と、不思議そうな顔をしていましたが、私に確認することを許してくれました。

しかし、それによって、その客はお茶を欲しがっておらず、実際にはお茶を飲むことができないことがわかりました。彼らはモルモン教徒で、戒律でお茶を禁じていたのです。私が僧侶にそのことを説明すると、代わりにお湯を出すことになりました。

また、ある時、日本の有名な歴史的建造物に宿泊する外国人留学生の受け入れを手伝ったことがあります。留学生が水を欲しがっていたので、その旨をホストに伝えると、ホストはすぐにお茶を用意し始めました。

私はそれを止め、「彼らはお茶ではなく、水を欲しがっています」と説明しました。すると、ホストは「大切なお客様に水を出すのは失礼です」と私を叱りました。私は、せめて生徒たちがお茶でよいか確認をするので待ってほしいとホストに伝え、実際に確認をしてみると、彼らは運動して疲れているので、寝る前に冷たいノンカフェインの飲み物が欲しいということでした。

このパターンに見覚えはありませんか? 相手が何を望んでいるかを確認する唯一の方法は、相手に尋ねることです。あなたが彼らにとってベストだと勝手に考えていることを、彼らが実際に望んでいることに置き換えてしまう危険性があります。

さらに悪いことは、一般的な印象に基づいて、その人が何を望んでいるかを決めつけてしまうことです。

前述したふたつの例は、お茶よりも水を好むアメリカ人の話です。しかし、すべてのアメリカ人がお茶を好まないと決めつけるのは間違いです。もしあなたがその人の国籍だけを理由にお茶を出さないことにしたら、その人は差別されたと感じ、不快な思いをするかもしれません。

相手の好みを知るには、相手に聞くのが一番安全です。思い込みは非常に危険なのです。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

欧州、ウクライナ和平巡る協議継続 15日にベルリン

ビジネス

ECB、成長見通し引き上げの可能性 貿易摩擦に耐性

ワールド

英独仏首脳がトランプ氏と電話会談、ウクライナ和平案

ビジネス

カナダ中銀、金利据え置き 「経済は米関税にも耐性示
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲う「最強クラス」サイクロン、被害の実態とは?
  • 4
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎…
  • 7
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 8
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 9
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 10
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中