コラム

テスト

2015年10月15日(木)16時40分

<第3政党の台頭を阻んでいる共和・民主両党だが、トランプの出現により政治革命が起こる可能性も>

今のアメリカの最大政党は「どれでもない党」だ。

無党派を自称する人は有権者の約40%。共和党と民主党の支持者はいずれも約30%だから、それを大幅に上回る巨大勢力だ。この30年ほどアメリカ人が既成政治にうんざりするなかで、無党派層は急拡大を遂げてきた。

背景にあるのは政治不信の高まりだけではない。共和党と民主党がイデオロギー的に保守とリベラルへ二極分化したことも大きな要因だ。

アメリカ政治学会は50年、政党はイデオロギー色をより鮮明に打ち出すべきだと提言した。当時の共和党と民主党は政策で重なる部分が多く、有権者が選択に迷う状況だったからだ。

その後、政治的な分極化が劇的に進み、今の状況は当時とは隔世の感がある。82年には下院の435人の議員のうち、ライバル政党とイデオロギー的に近い人は344人だったが、94年には252人に減少。02年には137人になり、現在ではなんと4人を数えるのみだ。

激化の一途をたどるイデオロギー的な対立は有権者を幻滅させた。議会では不毛な足の引っ張り合いが繰り広げられるばかりで、自分たちが望む政策は一向に実現しないからだ。

それでも、1852年の選挙以降、アメリカの大統領選では常に共和党と民主党の候補が1、2位を占めてきた。唯一の例外は1912年の大統領選。共和党の指名候補になれなかったセオドア・ルーズベルトが新党を結成して出馬し、民主党のウッドロー・ウィルソンには敗れたものの、共和党の指名候補ウィリアム・ハワード・タフトを抑えて堂々の2位となった。

選挙戦の常識が変わる

ではなぜ、アメリカでは2大政党の支配に第3政党が食い込めないのか。その答えは、共和党、民主党とも現状維持を望んでいること、そして選挙制度そのものにある。

フランスの政治学者であるモーリス・デュベルジェが提唱した「デュベルジェの法則」をご存じだろうか。この法則によると、アメリカの選挙制度(多数決による単純小選挙区制)では、2大政党制になりやすい。

小選挙区制が2大政党制を促進するのは、主に2つの要因が働くからだ。1つは心理的な要因。この制度では1選挙区で1人しか選出されないから、第3政党に投票し続けていると、有権者は自分の票が死に票になると気付く。そのため支持していない2つの有力政党のうち、ましだと思うほうの政党に投票するようになる。結果、第3政党は議席獲得の望みを断たれる。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

世界貿易、AI導入で40%近く増加も 格差拡大のリ

ビジネス

インドネシア中銀、予想外の利下げ 独立性に懸念

ワールド

イスラエル軍、ガザ市住民の避難に新ルート開設 48

ワールド

南アCPI、8月は予想外に減速 金融政策「微妙な判
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story