コラム

自分がどうしたいか、「決め方」を知らない子供たち...未来の可能性を広げる取り組み始まる

2022年08月03日(水)10時10分

実際に「ミライの選択」を提供した高校の生徒からは、「部活を辞めるか続けるかで悩んでいた時に、学んだ内容が生かせた」との反響があった。また、保護者や教師との二者面談、三者面談において、従来は生徒が何も言い出さずに対話することが難しいケースもあったが、「ミライの選択」で生徒が自分の考えや希望を反映した表によって「子どもたちとコミュニケーションを取りやすくなった」と大人からも好評だった。

2021年度は1000人程度を対象として実施したが、2022年度は既に4000人規模での実施が決まった。対象校の地域も北海道や新潟、和歌山、静岡など全国的に広がりが出てきているそうだ。

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(河合塾提供)

未来の材料を集める

一方の「ミライの洞察」は思考を自由に拡散させていき、未来についての想像を膨らませるプログラムだ。未来を考え、想像するために、身近なニュースなど未来の「素材」を集めて組み合わせ、未来のアイデアを創発していく。「料理に例えると、決まったレシピに沿って作るのではなく、使う材料の選定段階から自分たちで考えて未知の食べ物を作る」(山本さん)イメージだという。

テキストをもとに、自分の価値観や進路の考えを深めていく「ミライの選択」と違い、「ミライの洞察」は個人とグループのワークを繰り返しながら、未来の社会を想像し、アイデアを発展させていく。

未来学でも前提となる、「起こりうる」未来や「起こりそう」な未来の概念を知り、その未来が「良いか悪いか」といった評価軸で考えていく訓練を、クラスメートと共に行っていく。

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「ミライの洞察」のテキスト(筆者提供)

「風が吹けば桶屋が儲かる」の思考をまねてマインドマップを作ってみようと促し、「ミライへ思考をジャンプさせる」コツの体得につなげていくような演習もある。自分たちが大人になる頃の世界を想起するために、AI(人工知能)やロボット、宇宙、再生医療といった未来的なテーマのニュースを意識的に収集する癖をつけてもらう狙いだ。

貴重な「ミライ」の学習経験

「ミライの選択」は「社会に出てからも通用するスキルや考え方を生徒に学んでほしいが、どう授業や学校行事に組み込めばいいのかわからない」といった課題を感じている学校に向いているという。社会人の間でも「学び直し」のニーズが高まっている今、何を修得するか、どの道に進むかを主体的に「決める」訓練を中高生のうちに腰を据えて学べる機会は貴重な経験になりそうだ。「ミライの洞察」は決める前の選択肢を広げるトレーニングに最適だそうだ。

河合塾のミライ研はこのほか、「ミライの科学」などのプログラムも用意している。山本さんは「未来を素材にして発想を広げて学ぶことで、常識を疑ってみたり、『ひょっとしたら他にも選択肢があるかもしれない』と新たな可能性を探索したりする生徒が増えたらうれしい」と話した。

プロフィール

南 龍太

共同通信社経済部記者などを経て渡米。未来を学問する"未来学"(Futurology/Futures Studies)の普及に取り組み、2019年から国際NGO世界未来学連盟(WFSF・本部パリ)アソシエイト。2020年にWFSF日本支部創設、現・日本未来学会理事。主著に『未来学』(白水社)、『生成AIの常識』(ソシム)『AI・5G・IC業界大研究』(いずれも産学社)など、訳書に『Futures Thinking Playbook』(Amazon Services International, Inc.)。東京外国語大学卒。

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