コラム

新宿案内人が14年も続けたコラムを休載する理由

2018年12月20日(木)20時55分

若者の低投票率を改善する「秘策」

外国人観光客を新宿に呼ぶための努力だって惜しまない。すでに中国人観光客は弾丸ツアーの「爆買い」を卒業して、自分で行き先を決める「自由行(自由旅行)」にシフトしているが、まだまだ情報が少ない。例えば新宿には哲学堂公園のような、まだまだ外国人に知られていない観光スポットがたくさんある(ちなみに中国語の「哲学」は日本語から輸入した言葉だ)。こういった隠れた観光名所をYouTubeで「新宿チャンネル」として紹介すべきだと思うが、まだ誰も手を付けていない。この仕事をぜひ、私にやらせてほしい。自分で言うのも何だが、中国のテレビでコメンテーターを務める私なら宣伝効果はかなりあるはず。ギャラは不要。歌舞伎町と15年の新宿区議選のおかげで、「第一の祖国」の人々にさらに知られるようになった私が、こういった形で新宿に恩返しするのは当然である。

まだまだ政策はあるが、このコラムで最後に訴えたいのが教育の充実だ。私の小学5年生の息子もいわゆる「お受験」を準備中なので、日本人の親たちが何に悩んでいるかは理解できる。ただ、ここで訴えたいのは大学生の政治教育だ。前回の選挙でも街頭で「私に投票しなくてもいいから選挙に行ってほしい」と訴えたが、日本の若者は選挙や政治に無関心すぎる。去年の衆院選から18歳と19歳も投票できるようになったが、18歳は50.74%、19歳は32.34%でどちらも平均投票率を下回った。

せっかく選挙権を与えたのにこんなに低い投票率なのは、日本の学校が政治に関心を持つ教育をしていないから。目の前のことにしか関心がなく、社会参加をしない若者が多すぎる。国会前のデモに参加しているのは老人ばかり。選挙に行きたくても、日本と同じような自由に投票できる選挙権がない中国人から見れば、むざむざと自分たちの権利をゴミ箱に捨てているようなものだ。大学生や専門学校生、働いている18歳や19歳の若者に選挙権の大切さを訴える授業が必要なら、私が無料で講師を引き受けよう。


2004年の4月からニューズウィーク日本版とウェブで14年間続けてきた私のコラムを「ある事情」でいったん休載することになった。このコラムには本当に感謝してもしきれない。歌舞伎町案内人として日本社会に知られるようになり、夜の世界や日本の中国人事情には詳しかったが政治や国際情勢については勉強不足だった私の視野を広げてくれたのは、ほかでもないニューズウィークのこのコラム。コラムに書いたことがきっかけで、罵声を浴びることも時にはあったが、それも今思えば経験だった。

コラムで自分の主張したいことを書けないのは正直寂しい。でも、これからはその代わりに街頭で直接、日本のみなさんに「政治活動」として語り掛ける。今の私は「熱身(ウォーミングアップ)」中。「本番」に向けて燃えるような気持ちで日々を過ごしている。もし私を見かけたら、ぜひ「コラムを読んでいたよ!」と声を掛けてほしい。

それでは街角で会いましょう!

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プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

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