コラム

ブレグジット期限だったのに何も決まらず!──イギリス政治に何が起こっているのか?

2019年03月29日(金)14時30分
ブレグジット期限だったのに何も決まらず!──イギリス政治に何が起こっているのか?

EUと合意した協定案が2度否決された上、8つの代替案のいずれも賛成過半数に至らなかった英議会(3月27日)  Reuters TV/REUTERS

<EU離脱、とくに「合意なき離脱」は経済社会に大きな混乱を招くといわれながら、EUとの合意は2度下院で否決され、代替8案への賛否を下院で聞いてもすべて否決。英議会は崩壊寸前?>

英国の欧州連合(EU)からの離脱(「ブレグジット」)が、迷走に迷走を重ねている。

2016年6月の国民投票で離脱が決定され、この3月29日には離脱するはずだったが、どうやって離脱するかについて議会内で意見がまとまらず、とうとう期日が延長されることになった。「第2次世界大戦後、最大の政治危機」ともいわれる事態を迎え、議会制民主主義を生んだ英国は空中分解中だ。いや皮肉なことに、議会制民主主義に徹しているからこそ身動きが取れなくなっている、それが今の崖っぷちの英国だ。

新たな離脱予定日は4月12日または5月22日。EUとメイ英政権が合意した、離脱条件を決める「離脱協定案」が議会で2度否決されてしまい、もしこれが可決できれば離脱は5月に、もし否決となれば4月になる。

現状では可決の見込みはなく、代案もない。このまま行けば4月12日、離脱実施となる。これは「合意なき離脱」ともいわれ、かなりの混乱が予想される。一方、政府の離脱協定案では移行のために2年間の調整期間を置くことになっており、可決されれば「秩序ある離脱」ができる。

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「テリーザの試練」:離脱強硬派が乗った大きな石を運ぼうとするメイ首相(3月18日、英デイリー・テレグラフ紙)(筆者撮影)

今年1月と3月中旬、政府案を大差で否決した下院は今、代案作りを急いでいる。しかし、27日、8つの代案について採決が行われたが、過半数の支持を得たものはなく、「すべてにノー」(英ガーディアン紙、28日付)だった。

いかに下院がバラバラになっているかを如実に示す結果だ。

いったいなぜ、これほど「決められない」状態となっているのだろうか。

「合意なき離脱」、政府案、離脱破棄、どれも反対!?

採決に出された8案とこれまでに下院が否決してきたほかの動議によると、以下の点では下院はほぼ一致している。

(1)「合意なき離脱」には反対。ビジネスや国民生活に大きな支障が出ると思われるため(ただし、与党・保守党内の欧州懐疑派は「合意なき離脱でも構わない」と公言している)。

(2)EUとメイ首相が合意した離脱協定案に反対(1月には230票、3月中旬には149票の大差で否決。主な理由は「親EU過ぎる」、そして北アイルランドとアイルランド共和国の国境問題を解決するための緊急措置=バックストップ=への反対だ)。

(3)離脱中止にも反対。

この3点以外、例えば関税同盟や単一市場に入るのかどうか、離脱協定批准の前に国民に是非を問う(「確認のための国民投票」)のかどうかなどについては、意見が分かれた。下院内は、「合意なき離脱でもいいから、とにかく離脱するべき」という強硬離脱議員と、現状になるべく近い状態を望む議員(程度に差はあるが、労働党案では単一市場継続参加を希望)が混在している。

プロフィール

小林恭子

在英ジャーナリスト。英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。『英国公文書の世界史──一次資料の宝石箱』、『フィナンシャル・タイムズの実力』、『英国メディア史』。共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数
Twitter: @ginkokobayashi、Facebook https://www.facebook.com/ginko.kobayashi.5

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