コラム

幼い子がいる家庭の24%が「食料の貧困」...子どものチャンスを広げるため、英国で注目が集まる2つのこと

2024年12月03日(火)18時20分

イングランド全土の小学校最大750校で無償の朝食を提供

マジック・ブレックファストは「朝食は子どもたちに不可欠と位置づけ、すべての子どもが朝食を食べられるよう政府は行動せよ」と訴える。英国初の女性財務相レイチェル・リーブス氏は教育相エレン・ウィルキンソン(1891~1947年)のレガシー(偉業)を称える。

エレンは大戦時連立政権の44年、教育法施行の責任者として初めてすべての子どもたちが無償で中等教育を受けられるようにした。学校に通うすべての子どもたちに栄養価の高い給食を無償で提供することも約束した。45年のクレメント・アトリー労働党政権では教育相を務めた。

4歳未満の子どもがいる世帯の24%が「食料の貧困」に陥る

エレンは47年に急逝し、無償の学校給食は長続きしなかった。エレンの遺志を受け、スターマー労働党政権はイングランドの小学校750校で無償の朝食を提供することを約束し、来年度予算に3300万ポンド以上を計上した。しかし学校側の準備が整わず26年4月まで延期された。

英シンクタンク「教育政策研究所」の報告書によると、今年1月時点で4歳未満の子どもがいる世帯の24%が「食料の貧困」に陥っていた。年長の子どもがいる世帯では19%だった。「食料の貧困」は子どもの教育にも悪影響を及ぼし、認知発達や数学、語彙力の低下と関係していた。

一方、金融リテラシーの向上に取り組む慈善団体「金融リテラシーとインクルージョン・キャンペーン」(FLIC)は21年、フィナンシャル・タイムズ紙によって設立された。その金融カリキュラムは約500の中学校で教えられている。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英中銀の12月利下げを予想、主要金融機関 利下げな

ビジネス

FRB、利下げは慎重に進める必要 中立金利に接近=

ワールド

フィリピン成長率、第3四半期+4.0%で4年半ぶり

ビジネス

ECB担保評価、気候リスクでの格下げはまれ=ブログ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 6
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 10
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 5
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 8
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story