コラム

女児3人死亡、英ダンス教室「刃物襲撃」事件...暴動にまで発展した、犯人めぐる「デマ」とは?

2024年08月01日(木)17時36分

ミニスーパーは略奪され、タバコや酒を中心に1万ポンド(約193万円)以上の商品が奪われた。マージーサイド警察は数人を逮捕し、「警察官54人が負傷し、少なくとも27人が病院に運ばれた。周辺の警察から支援を受け暴動の再発を防ぐ」と発表した。

騒動はロンドン中心部にも飛び火し、極右グループは警官隊と衝突、100人以上が逮捕された。

ナイフ襲撃を巡るデマが急速に広まった理由

サウスポートの住民は31日朝から瓦礫を片付け、ホウキで街頭を清掃した。しかし、どうして子どもたちが襲撃された悲劇が暴動に発展したのか。英紙ガーディアン(31日)は「サウスポートのナイフ襲撃を巡るデマが急速に広まった理由」と題して解説している。

30日午後4時ごろ、襲撃現場に献花したキア・スターマー首相には「あと何人の子どもたちが死ぬのか」「真実を明らかにしろ」と罵声が浴びせられた。嘘とデマ、プロパガンダの泥沼が広がり、地元住民の中には警察とメディアがテロの証拠を隠していると断言する者もいた。

事件後、SNS上で国内外の極右活動家や陰謀論者が「犯人はイスラム系移民」「不法移民だ」とデマを撒き散らした。扇動された極右グループは「誰の通りだ。われわれの街路だ」「死ぬまでイングランドだ」と叫びながら警官の列に突入し、無法の限りを尽くした。

英国では容疑者が起訴されると公判が始まるまで事件を報道できない。しかも今回は容疑者が少年。そうした事情が「情報の空白」を生み、嘘やデマ、プロパガンダを増幅させる。がん治療を受けていたキャサリン皇太子妃の健康状態を巡る陰謀論も同じ構図で世界中に拡散した。

イベット・クーパー内相は、ソーシャルメディア各社は「何らかの責任を取るべきだ」と強調した。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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