コラム

サッカー女子W杯、イングランド悲願の初優勝なるか? 「優勝請負人」監督の「成功するための13カ条」

2023年08月19日(土)16時47分

欧州選手権の優勝メンバー、代表52ゴールの「ライオネス不動のストライカー」エレン・ホワイト(34)は英大衆紙サンにサリーナが成功を収めている秘訣についてこう語っている。「私たちライオネスはピッチの内外でみんなの長所をまとめ、自由に自分を表現できるようにする人(監督)を必要としていた」。優勝するためのピースはそろっていた。

「サリーナは単純に素敵な人で私たちに多くの共感を示してくれる。プレーヤーとしてだけでなく、人間的なレベルであなたのことを知りたがる。彼女はあなたの家族について話をする。彼女のコミュニケーションレベルは私たちがこれまで経験してきたものとは別次元。彼女は選手一人ひとりを知っていて、何が彼らを動かすのかを知っている」

絶対に成功するという勝者のメンタリティー

サリーナの手腕は昨年の欧州選手権優勝から今年のW杯決勝進出まで新旧交代が水の流れるが如く進んだことからもうかがえる。今回大会、ライオネスの主将だったリア・ウィリアムソンが前十字靭帯損傷で欠場しても「穴」を全く感じさせない。サリーナを際立たせているのは精緻な戦術だけではなく、幼い頃から天井と闘ってきた不屈の魂である。

オランダ代表の監督に就任した直後、サリーナは選手たちに「成功するためにあきらめるべき13のこと」という記事を渡したことはよく知られている。その内容は正確には分からないが、「あきらめるべき13のこと」とは次のような内容だと思われる。男子も女子もイングランド代表に欠けていたのは絶対に成功するという勝者のメンタリティーだ。

(1)不健康なライフスタイルを止める。
(2)短期的な見方を止める(長期的な視野を持つ)。
(3)限界をつくるのを止める(大きな夢を持つ)。
(4)言い訳を止める。
(5)固定観念を捨てる。
(6)すべてを解決する「魔法の弾丸」があると信じるのを止める。
(7)完璧主義を捨てる。
(8)複数の目標を掲げるのを止める(1つの仕事に打ち込む)。
(9)すべてをコントロールしようとすることをあきらめる(コントロールできるものに集中する)。
(10)自分の目標を妨げることは受け入れない。
(11)有害な人間とは付き合わない。
(12)好かれたいという欲求を捨てる。
(13)時間の無駄使いをやめる。

ストリートサッカーで育ったサリーナは幼少期から「ガラスの天井」どころか「鉄の天井」に押さえつけられてきた。6歳の頃、オランダ・ハーグでは女の子がピッチに立ち入るのは禁止されていた。このため、サリーナは髪を短く切って男の子になりすまし、双子の兄弟トムと一緒に地元チームでプレーした。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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