コラム

サッカー女子W杯、イングランド悲願の初優勝なるか? 「優勝請負人」監督の「成功するための13カ条」

2023年08月19日(土)16時47分
サッカー女子イングランド代表

サッカー女子イングランド代表に語り掛けるサリーナ・ウィーグマン監督(8月7日) Dan Peled-Reuters

<サッカー・イングランド代表が世界的大会で決勝に進むのは男子がW杯で優勝した1966年以来。女子代表は悲願の初優勝を果たせるか>

[ロンドン発]オランダ女性のサリーナ・ウィーグマン監督率いるサッカー・イングランド女子代表がワールドカップ(W杯)準決勝で開催国オーストラリアを破り、初の決勝進出を果たした。サッカーの祖国イングランドのフル代表が世界的大会で決勝に進むのは男子代表がW杯で優勝した1966年以来。20日の決勝でスペインと対戦、悲願の初優勝を目指す。

オランダ女子代表監督として2017年UEFA欧州選手権を制し、19年女子W杯で決勝に進出したサリーナは21年、イングランド女子代表監督に就任。サリーナが就任するまでオランダは親善試合5試合で4敗を喫するなど「どん底」だった。イングランドもフィル・ネビル監督が不振の責任を取って辞任するなど迷走していた。

サリーナによって「ライオネス(イングランド女子代表の愛称)」は見事に蘇った。北マケドニアを8-0で下したのを皮切りにラトビアを20-0で粉砕するなど、22年欧州選手権初優勝と30試合無敗記録を達成。今年4月、親善試合でオーストラリアに2-0で負けたあと、再び7試合無敗でW杯決勝にコマを進めた。

38試合30勝1敗7分151得点15失点。2点取られたのはオーストラリアに負けた1回だけで24試合は相手をクリーンシート(零点)に封じ込めている。今大会もGKメアリー・アープス、ミリー・ブライト(主将)、アレックス・グリーンウッド、ジェシカ・カーターのDF陣、キーラ・ウォルシュ、ジョージア・スタンウェイのMF陣は鉄壁の守りを見せる。

シンプルに強く、正確で美しいサッカー

攻撃陣も破壊的だ。「女メッシ」の異名を取るアレッシア・ルッソ、絶好調のローレン・ヘンプのFW陣、オーストラリア戦で先制点を叩き込んだ背番号10エラ・トゥーン、サイドから槍のように突破するルチア・ブロンズ、レイチェル・デイリーのMF陣。ベンチには欧州選手権で優勝ゴールを決めたクロエ・ケリー、新星ローレン・ジェームズが控える。

近代サッカーの原点「トータルフットボール」をピッチ上で表現した「空飛ぶオランダ人(フライング・ダッチマン)」ヨハン・クライフは「美しく敗れることを怖れてはいけない。無様に勝つことを怖れよ」という言葉を残したが、サリーナのサッカーは「シンプルに強く、正確で美しい」。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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