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英政府の密航者対策は「ナチスと同じ」残酷さと、あのリネカーが大批判して議論沸騰
1834年に奴隷制度が廃止されると、インド人年季奉公労働者の需要は飛躍的に高まり、アフリカやカリブ海のプランテーションに大量に送り込まれた。第二次世界大戦後、極度の労働力不足に見舞われた英国はこうしたインド系移民を受け入れた。インドから二度にわたって移住したことから「二度移民」と呼ばれ、英国人としての意識と忠誠心が極めて強い。
ブラバーマン内相は7日、下院で不法入国者対策法案について「この2年間で小型ボートによる密航が500%増加した。本法案は不法入国者を国外退去させるまで拘留することを可能にする。保釈も、拘留後28日間の司法審査も認められない。不法入国者が強制退去を阻むために2015年現代奴隷法を悪用することも認めない」と断言した。
不法入国者対策法案とは
不法入国者対策法案が成立すれば、英国から強制退去させられた人は将来、英国への再入国や英国籍を取得できなくなる。「合法ルート」で定住できる難民の数に上限を設ける。昨年4月、ボリス・ジョンソン英首相(当時)は英国への密航者をアフリカ中部ルワンダへ移送する方針を打ち出したが、「人権上、問題あり」として法廷で争われている。
ブラバーマン内相の説明では昨年、現代奴隷法を適用して1万7000件の事案が平均543日かけて検討された。欧州の安全な国であり、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のアルバニア国民からの難民申請の50%以上が許可された。「もうたくさんだ。こんなことは続けられない。政府と首相はボートを止めるために今すぐ行動する」とブラバーマン内相は言った。
2015年以来、英国は約50万人の難民を受け入れてきた。その中には独裁政治から逃れた香港の15万人、ウラジーミル・プーチン露大統領の戦争から逃れたウクライナ人16万人、タリバンから逃れたアフガニスタン人2万5000人などが含まれている。しかし現在16万6000人以上もの難民申請者が英国に残留できるかどうかの判断を待っている。
英シンクタンク「オックスフォード移民監視団」によると、21年時点で英国における難民申請の平均待ち時間は15カ月半、フランスは8カ月半、ドイツは6カ月半、オーストリアは3カ月余だった。21年に小型ボートで英国に到着した人のうち申請に対して決定があったのはわずか4%。申請から1年以上経たないと英国では就労できない。
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