コラム

中国の感染爆発、死者は「1日1万1000人」と英医師会誌 「4月末までに170万人が死亡」

2023年01月04日(水)12時03分

コロナの場合、ワクチン接種や自然感染による免疫は時間とともに低下する。英イースト・アングリア大学医学部のポール・ハンター教授(感染症)によると、ワクチン接種後の免疫(50%以上の人)はおそらく1年程度だが、自然感染はやや長くなり、ハイブリッド免疫ではさらに長くなる。 ハイブリッド免疫は少なくとも数年間、重症化を予防する。

中国はゼロコロナ政策に固執してきたため、自然感染が広がらず、個々人にも社会全体にもハイブリッド免疫は形成されなかった。さらに国産ワクチンにこだわったため重症化に対する予防効果は低く、昨年2月ごろからワクチン接種をほとんど行っていない。このため「感染に対する防御はほとんど失われている」(ハンター教授)という。

「ゼロコロナ政策を撤廃したから感染爆発が起きたのではない。撤廃する前から都市部で無症状者によるステルス感染が広がっており、ゼロコロナ政策を維持するのは無意味との結論に習近平国家主席が達したのだろう」とハンター教授は分析する。

3年近く続いたゼロコロナ政策で目立つシャッター街

3年近く続いたゼロコロナ政策で中国の企業は潰れ、店を畳んだシャッター街には「求人」ではなく「売店」の貼り紙が目立つという。ゼロコロナ政策の撤廃で回復が期待された経済は入院患者と死者の大量発生でさらなるカオス(混乱)に陥っている。

中国共産党系機関紙「人民日報」傘下の「環球時報」英語版は「国は感染防止から重症化予防に重点を移すようになった」と地域病院でコロナ治療に取り組む様子を伝えている。習氏がいかにゼロコロナ政策撤廃の「現実」を覆い隠そうとしても、ソーシャルメディアで拡散していく国民すべての目を塞ぐことはできない。

環球時報は「12月8日と9日は多くの医療スタッフが感染したため、当直の医師1人が2日間で1400人ほどの患者を受け持った。ピークは12月26日、27日まで続いた」という地域病院の医師の言葉を紹介している。国家衛生健康委員会も多くの都市で感染爆発が起き、12月上旬に感染者数が急増したことを認めている。

英大衆紙デーリー・メールは「中国当局者がコロナによる死者数が"膨大"であることを認める。上海市の住民2500万人の70%が感染」と報じている。ウクライナ戦争がウラジーミル・プーチン露大統領の命取りになる可能性が大きいのと同様に、コロナ対策の失敗が習氏の致命傷になる可能性が出てきた。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は小幅反落、くすぶる高値警戒 史上最

ワールド

トルコCPI、10月前年比+32.87%に鈍化 予

ワールド

高市首相、来夏に成長戦略策定へ 「危機管理投資」が

ワールド

森林基金、初年度で100億ドル確保は「可能」=ブラ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story