コラム

「私の主人はプーチンではなくルーブルだ」 プーチンと対立したロシア元石油王の闘争

2022年04月07日(木)17時52分

「ウラジオストクは中国固有の領土」中露接近のリスク

プーチン氏が米欧に背を向け、中国の習近平国家主席に接近していることについては「中国もこんな状況になることを望んでいなかった。中国にとって欧州の平和は非常に大切だ。アメリカの消費者もとても重要だ。プーチンの野望は中国の望むところではない。中国はロシアの敵ではないが、周りからは対立者として見られる必要に迫られている」と分析する。

「中国とロシアが共存することは可能だが、中国で政権が交代すればロシアに対して強硬な外交姿勢に転換する可能性がある。ウラジオストクを含む極東は中国固有の領土という主張は中国社会の一部に確かにある。中国に原油・天然ガスを輸出したり、中国製品を輸入したり、対中依存が高まれば中国に利用される。ロシアの資源は買い叩かれる恐れがある」

「私の経験では中国は自分たちのアドバンテージをフルに使って揺さぶってくるタフネゴシエーターだ。ロシアが米欧と対立することは中国に付け込むスキを与える。プーチンが中国に接近するのはとんでもない誤りだ」とホドルコフスキー氏は指摘した。ロシアの豊富な資源は将来、巨龍の中国に貪り尽くされる恐れがある。

ロシアの体制転換については「ロシア市民が立ち上がってプーチンを倒す可能性があるとは思えない。なぜならロシア社会は銃を持っていないからだ。プーチンは十分な軍隊を持ち、歯向かってくる市民を銃撃するよう命じる用意がある。近代化兵器は丸腰の市民が政権に抵抗するのを許さない」とみる。

「プーチンが失脚するとしたら体制内のクーデターだ」

ホドルコフスキー氏は「プーチンが政権の座から滑り落ちるとしたら体制(クレムリン)内のクーデターだ。彼らはプーチンのそばにいて、自分たちの現在と未来を失いつつある一部始終を見ている。70歳以上ならすべてを受け入れる腹積もりはあるかもしれないが、40~45歳の若い人にはとても受け入れることはできないだろう」との見方を示す。

プーチン氏はウクライナ軍と領土防衛隊の死力を尽くした抵抗に撃退され、首都キーウの包囲と傀儡政権の樹立という所期の目標をあきらめた。いま東部と南部の「解放」に戦力を集中している。西側がプーチン氏の一方的な勝利宣言で戦闘が終了したあとも一致団結してウクライナに武器を供与し、非妥協的に対露制裁を継続できるかにすべてはかかっている。

獄中、他の服役囚にナイフで顔を切りつけられても信念を変えなかったホドルコフスキー氏の忠告に私たちは耳を傾けるべきだろう。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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