コラム

「セクシーじゃないね」化石賞に輝いた日本の石炭依存度

2019年12月09日(月)11時50分

COP25会場周辺で安倍首相に石炭支援を止めるよう訴える活動家たち(FoE Japan高橋英恵氏撮影)

[マドリード発]スペイン・マドリードで開かれている気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)で、温暖化対策に後ろ向きな国として日本とブラジル、オーストラリアに世界の環境団体でつくる「気候行動ネットワーク(CAN)」から「化石賞」が贈られた。

COP25開幕を受けて、梶山弘志経済産業相は「国内も含めて石炭火発、化石燃料の発電所は選択肢として残しておきたい」と発言。2011年の福島原発事故で原発依存度を低減している日本は逆に石炭、天然ガス、石油といった化石燃料依存度を増している。

アマゾン熱帯雨林の火災を放置しているとして国際社会から非難されているブラジルのジャイル・メシアス・ボルソナロ大統領と同列だから相当な不名誉だ。朝日新聞オピニオン欄への投稿で「小泉環境相殿 セクシーじゃないね――化石賞」(津・ひぐらし)と皮肉られた。

国連気候行動サミットで温暖化対策の取り組みは「セクシーでなければ」と発言した小泉進次郎環境相は日本の「化石賞」受賞が「珍しくなくなっていることは残念。もう1回受賞することがあれば、私が授賞式に行って日本の取り組みを正確に発信したい」と話した。

G7で唯一石炭火力発電を推進

日本の脱原発は皮肉にも国内の石炭依存度を押し上げ、海外の石炭火力発電プロジェクトまで支援している。日本政府に脱石炭を求める国内外の市民団体連合「No Coal Japan(日本よ、石炭はもう止めて)」は英紙フィナンシャル・タイムズ・アジア版に全面の意見広告を出した。

KimuraMasato_coal_abe.jpg

FT紙アジア版に掲載された全面広告


全面広告はランニングシャツを着た安倍晋三首相が「コール(石炭)メダル」首にかけているイラストを掲載。「私たちは破滅的な気候変動に対して時間と戦っている」と訴え、安倍首相に石炭火力発電への支援を止めるよう要求している。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は温室効果ガス排出への課税と化石燃料への数兆ドル(推定)の補助金撤廃を求め、2020年までに石炭火力発電所の建設を止めるよう呼びかけている。

しかし温暖化防止に取り組むNPO 気候ネットワークによると、日本は世界で2番目に多い公的資金を石炭火力発電に投じている。石炭火力発電を推進しているのは先進7カ国(G7)では日本だけ。2012年以降、15基の石炭火力発電所が新たに稼働し、さらに15基が建設中という。

国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、31年ぶりに商業捕鯨を再開したのと同じように日本は石炭火力発電でも梶山経産相の発言通り我が道を進み続けるのだろうか。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アンソロピック、来年にもIPOを計画 法律事務所起

ワールド

原油先物は続落、供給過剰への懸念広がる

ビジネス

来年末のS&P500、現行水準から10%上昇へ=B

ビジネス

キオクシアHD株、ベインキャピタル系が一部売却 保
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 3
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 4
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 5
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 6
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 10
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story