コラム

シリア停戦発効でも、ますます混迷深まる欧州難民危機 その対処策を考えてみる

2016年03月03日(木)17時00分

 先進国諸国の将来の政府開発援助(ODA)資金を償還財源にしている「予防接種のための国際金融ファシリティー(IFFIm)」と同じような枠組みで「難民受け入れ債」を発行することをソロスは提案している。EUによる臨時共同債の発行は加盟国に協調と統合の深化を促すきっかけになるだろう。緊縮財政に悲鳴を上げるギリシャやイタリアにも余裕を与え、欧州に忍び寄るデフレを一掃してくれる可能性すらある。それこそ常に危機をバネに統合を進めてきた欧州の歴史にかなっている。

 これは形を変えた「21世紀の戦争」なのだ。「破壊」と「構築」との。紛争地に無数の爆弾を落としたり、有刺鉄線のフェンスを張り巡らして軍隊を展開したりするより、「難民受け入れ債」を発行する方がよっぽどマシな金の遣い方だと思うのだが。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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