コラム

韓国のアンケート調査からみた世代間の意識の違い

2020年10月09日(金)16時30分

ソウルの金融街に隣接する公園。新型コロナウイルスのために閑散(9月10日) Kim Hong-Ji-REUTERS

<上の世代より成功のチャンスは減っている中でも、平等より成長や公正な処遇を求める意識が明らかに>

前回までの拙稿では2回続けて韓国における世代間の葛藤と格差について紹介した。今回は、アンケート調査に基づいて韓国における世代間の意識の差について話したい。

韓国保健社会研究院が2016年に発表した調査結果では、回答者の62.2%が「世代間の葛藤が深刻である」と答えた。この結果は2014年調査 の56.2%より6ポイントも高い数値である。また、大韓商工会議所が2020年に実施した調査によると、サラリーマンの63.9%がジェネレーションギャップを感じていることが明らかになった。「成果のために夜勤をすることは仕方がない」に対して同意する20代や30代の割合はそれぞれ26.9%と27.2%で、40代と50代の35.8%と42.8%を大きく下回った。また、「組織のために個人を犠牲することができる」に対して同意する20代と30代の割合はそれぞれ35.2%と33.5%で40代と50代の47.4%や66.7%を大きく下回った。

Figure-01-new.jpg

ソウル市は2019年10月から12月の間に19歳~39歳(以下、若者世代)の男女1万人と40~64歳(以下、中高年世代)の男女1,500人を対象に世代間の価値観を比較する調査を行った(1)。調査はAとBという二つの選択肢の中からAを選好する場合は-3点、-2点、-1点の中から一つを、Bを選好する場合は3点、2点、1点の中から一つを選択するようにしている。A,Bどちらでもない場合には0点を選択するようにし、若者世代と中高年世代平均点を比較した。

(1)ソウル市(2019)「世代均衡指標開発のためのソウル青年実態調査結果」


まず、「分配を重視する社会」(-3点~-1点)と「成長を重視する社会」(1点~3点)に対する選好度を聞いたところ、若者世代の平均点数は0.47点で、中高年世代(0.19点)よりも成長を重視する傾向が強かった。また、「個人間の能力の差を補った平等社会」(-3点~1点)と「個人間の能力の差を認めた競争力重視社会」(1点~3点)に対する若者世代の平均点は0.55点で、中高年世代の0.44点より高く競争力を重視する社会を選好していることが分かった。

チームの成果より個人の成果

一方、「税金を多く納める代わりに危険に対する国の責任が大きい社会」と「税金を少なめに納める代わりに危険に対する個人の責任が大きい社会」に対する若者世代の平均点は-0.31点で、前者を重視しており、中高年世代(-0.36点)より個人の責任や役割を重視していた。

チームで作業をした場合、「チーム員すべてが評価されることが公正である」と「寄与度が異なるのに同一に評価されるのは公正ではない」に対する中高年世代の平均点数は0.14点で中立的な立場を見せていたのに比べて、若者世代の平均点数は0.83点で後者に近く、協同を口実としたフリーライダー(ただ乗り)は認めないという立場を示した。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所客員研究員、日本女子大学人間社会学部・大学院人間社会研究科非常勤講師を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story