南米2大国の「共通通貨」構想...チラつく中国の影と、国際情勢における意味を読み解く
GETTY IMAGES
<現実的に共通通貨の創設は困難だとしても、米中対立と経済ブロック化が進む中で持つ意味合いは軽視すべきでない>
南米ブラジルとアルゼンチンが、両国に通用する「共通通貨」の創設に向けて協議を開始した。アルゼンチンのインフレ率は90%を超えており、実現は困難との声は強い。実務的にはそのとおりだが、両国の動きは国際金融や国際政治に微妙な影響を与えそうだ。
ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ大統領(写真左)とアルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領(同右)は首脳会談で、両国の共通通貨「スール(仮称)」の創設に向けて協議を始めることで合意した。
ブラジルの通貨はレアル、アルゼンチンの通貨はアルゼンチン・ペソだが、新通貨は両通貨を完全に置き換えるのではなく、既存通貨を残したまま、共通通貨を発行する。新しく発行される通貨は日常的な取引には用いられず、両国が加盟する「南米南部共同市場(メルコスル)」などにおける貿易決済通貨としての活用を想定している。
現在、国際金融システムはドルをベースに構築されており、南米のようにドル以外の通貨を持つ国においても、貿易決済にはドルが使われるケースが多い。こうしたドルを基軸にした国際金融システムは、アメリカが持つ覇権の1つであり、経済力が小さい国にとっては、アメリカに依存せざるを得ない要因となっている。
そもそも両国はなぜ共通通貨構想を打ち出した?
南米最大の経済大国であるブラジルと2位のアルゼンチンが組んで共通通貨を構築できれば、域内の貿易を低コストで、かつアメリカに依存せずに実行できる可能性が見えてくる。
もっともアルゼンチンは経済破綻ギリギリの状態であり、ブラジルも高インフレが続き、経済基盤が良好とはいえない。こうした両国が共通通貨を創設するのは容易ではなく、実現は難しいとの見方が大半を占める。特にブラジルにとってはデメリットも大きいが、なぜ両国は共通通貨創設構想を打ち出したのだろうか。背景には世界経済の急速なブロック化と、それに伴う通貨覇権のシフトという政治的な動きがあると考えられる。
世界経済は米中の政治的対立とロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、アメリカ圏、中華圏(東南アジアとロシアを含む)、欧州圏への分断が進んでいる。1990年代以降、世界経済はグローバル化(単一市場化)が進み、それに伴ってドルの地位は圧倒的になった。ところが世界経済がブロック化し始めたことで、ドル中心の国際金融システムに変化の兆しが出ている。
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