コラム

金利上昇で住宅ローンが危ない! 収支ギリギリの人は要注意

2018年10月16日(火)13時30分

年収1000万円以下で新築マンションを購入するのはもはや夢物語?(写真はイメージ) Juergen Sack-iStock

<アメリカの金利上昇→日本の長期金利上昇→家計直撃のシナリオが現実味を帯びてきた。用心すべきは変動金利で住宅ローンを組んでいる人と、固定期間選択型を選んでいる人だ>

マイナス金利政策の導入以後、ゼロ近辺に張り付いていた長期金利がとうとう上昇を開始した。今の日本経済はゼロ金利を前提に組み立てられており、このままの状態で金利が上昇すると、あらゆる分野に影響が及ぶ。消費者の生活という点では、やはり住宅ローンへの影響がもっとも大きいだろう。変動金利で住宅ローンを組んでいる人は、月々の返済額が想定外に増える可能性があるので注意が必要だ。

米国の金利に引きずられて日本の金利も上昇を開始

金利上昇の直接的なきっかけは米国の株高と金利高である。米国の長期金利は、昨年までは2.5%前後で推移していたが、2018年に入って徐々に上昇を開始し、今年の10月にはとうとう節目とされる3%を突破した。

米国で金利が上昇しているのは、米国経済が堅調に推移していることに加え、ダウ平均株価が史上最高値を更新するなど、株式市場が活況を呈しているからである(先週の急落は高値への警戒感が主な要因である)。金利上昇のペースが速すぎると景気の腰を折る可能性があるものの、しばらくは良好な経済指標が続き、金利も3%台で定着するとの見方が強まっている(中期的には米中貿易戦争や株価の大幅調整といったリスクを考える必要があるが、本稿では割愛する)。

日本は量的緩和策を継続中であり、本来であれば金利はゼロ近辺で推移していなければならない。だが日本のように市場規模が相対的に小さい国の場合、自国のファンダメンタルズだけで金利を決定できないので、大国の金利に追随することになる。

米国の金利上昇を受けて、日本の長期金利もジワジワと上がり始めている。日銀による国債の買い入れ額が減っていることもあって、金利が上がりやすい地合いでもある。もし米国の金利上昇が今後も続くようなら、日本の金利もさらに上がると考えた方が自然だ。

変動金利で住宅ローンを組んでいる人は要注意

今の日本経済は超低金利が続くことを前提にすべてが組み立てられており、このままの状態で金利が上昇するとあらゆる分野に影響が及ぶ。最終的には財政への影響がもっとも深刻だが、消費者の生活という点では、やはり住宅ローンへの影響が大きいだろう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story