コラム

ボーイングとエンブラエル統合でMRJが大ピンチ? 頭をよぎる過去の失敗

2018年01月09日(火)17時25分

MRJは2010年9月に製造を開始した REUTERS-Yuriko Nakao

<1800億円の赤字を出して撤退したビジネス・ジェット事業のケースとMRJが置かれた状況には共通点がある>

苦戦が続く日の丸ジェット「MRJ」にとって、さらに厳しいニュースが飛び込んできた。最大のライバルであるブラジルのエンブラエルが米ボーイングとの経営統合に向けて動き始めたのである。ブラジル政府が難色を示しており、実現するのかは不透明な状況だが、世界の航空機産業が機体の種類(サイズ)を超えた統合に向けて動き始めたことは間違いない。

航空機産業はコモディティ化で寡占化が進む

航空機世界最大手の米ボーイングがブラジルの航空機メーカーであるエンブラエルとの提携交渉を進めていることが明らかとなった。ブラジル政府が難色を示しているとされ、最終的に経営統合が実現するのかはまだ分からない。

だが航空機産業の市場動向を考えれば、ボーイングとエンブラエルが統合に向けて動き出すのはごく自然なことであり、仮に今回の統合が失敗しても、基本的な流れは変わらないと筆者は見ている。最大の理由は航空機のコモディティ(汎用品)化である。

現在、大型・中型旅客機の分野では、ボーイングと欧州エアバスの2社が圧倒的な地位を占めている。唯一の例外は、FAA(米連邦航空局)の型式証明とは異なる独自の基準を採用している中国市場で、2社の航空機に混じって中国製の航空機が空を飛び始めている。しかし、それ以外の地域では、ボーイング製かエアバス製であることがほとんどといってよい。

一方、小型機(リージョナル・ジェット)の分野では、エンブラエルのシェアが高く、カナダのボンバルディアがこれを追うという図式になっている。

かつて航空機産業には多数のメーカーが存在していたが、数社にまで絞られてきた最大の理由は、産業構造の質的な変化である。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

長期金利が2%に上昇、19年半ぶり高水準 国債先物

ビジネス

日銀が利上げ決定、政策金利は30年ぶり高水準に 賃

ビジネス

フェデックス、MD-11運航停止で最大1.75億ド

ビジネス

利上げで経済界に一定の影響考えられる、注視したい=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story