コラム

ボーイングとエンブラエル統合でMRJが大ピンチ? 頭をよぎる過去の失敗

2018年01月09日(火)17時25分

寡占市場に新規参入するのは極めて困難

航空機は高付加価値産業といわれ、最終製品を製造する航空機メーカーの利益率は高かった。だが、この分野にも徐々にコモディティ化の波が押し寄せ、完成機メーカーがゼロから航空機を作るというケースはほとんどなくなってしまった。今では大手の部品メーカー各社が半完成品の状態で主要部品を納入し、完成機メーカーはこれを組み立てるだけというのが主流となっている。

つまり現代の航空機は、どのメーカーが作っても中身はほぼ同じようなものであり、他社との差別化が難しくなっているのだ。完成機メーカーの利益率も下がっており、最近では販売価格に対する製造原価率が9割を超えるケースも珍しくない。ロングセラーとなった人気機種が生み出す利益を、儲かっていない機種の損失に充当することで何とか全体の利益を維持している。

経営学上の常識として、こうした市場においては、高いシェアを持ち、分厚い顧客基盤を持つ既存メーカーが圧倒的に有利になる。航空機がコモディティ商品になっている以上、ニッチ(隙間)戦略を採用することはできず、極端な値引きでシェアを伸ばすことも不可能だからである。

しかも航空機は安全が第一であり、顧客であるエアライン各社はできる限りリスクを抑えたい。価格がそれほど変わらないのであれば、豊富な実績があり、整備マニュアルなど運用上のノウハウが豊富な既存メーカーを選択するのは自然な流れといってよい。

価格が高く整備の手間もかかる大型機については、今から新規参入してボーイングとエアバスの2社に勝てる可能性はほとんどゼロといってよいだろう。一方、リージョナル・ジェットは、大型機より利益が少なくボーイングとエアバスの2社は、積極的に製品を投入してこなかった。ここに着目したのがエンブラエルであり、同社はこの市場で圧倒的な地位を確立した。

もっともエンブラエルも簡単に今の地位を築いたわけではない。同社の設立は1969年だが、長きにわたって赤字経営が続いてきた。経営が軌道に乗り出したのはつい最近であり、同社にとってはようやく獲得した市場ポジションということになる。

同じ失敗を繰り返す?

航空機のコモディティ化が進み、すでに数社の寡占市場になっているという現実を考えると、機体のサイズを超えた寡占化に向けて動き出すのは必然といってよい。

気になるのはエアバスとボンバルディアの動きだが、昨年10月にはボンバルディアの一部機種(Cシリーズ)事業をエアバスの傘下に移管することが決まっている。全社的な提携にまで進むのかは分からないが、大きな流れとしては、ボーイング-エンブラエル、エアバス-ボンバルディアという2大グループが形成されつつある。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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