コラム

ボーイングとエンブラエル統合でMRJが大ピンチ? 頭をよぎる過去の失敗

2018年01月09日(火)17時25分

一連の動きは市場への新規参入を狙うMRJにとって強烈な逆風となってしまう。MRJは開発が大幅に遅延しており、すでに5回も納入を延期した。昨年12月にはMRJの製造を担当する三菱航空機が、初の受注キャンセルが出る可能性について言及している。

MRJの開発が遅延しているのは技術的な問題というよりも、手続き上の問題といってよい。

航空機を世界で販売するためには、事実上の世界標準となっている米国の型式証明を取得する必要がある。役所の手続きというのは、どこも煩雑であり、米国も例外ではない。米国の審査をパスするための設計変更が相次ぎ、スケジュールが大幅に遅延。慌てた三菱重工は手続きに慣れた米国人社員を破格の待遇で大量採用したものの、挽回するのは容易なことではない。型式証明の取得に手間取っている間に、市場は着々と寡占化に向けて動き始めた。

同社には、ビジネス・ジェットの分野で新規参入を試みたものの、1800億円もの赤字を出して撤退したという過去がある。失敗した理由は、米国の型式証明の取得に手間取り、その間に市場環境が変化したことである。航空機事故をきっかけに審査基準が変わったという特殊要因はあったものの、米国の航空当局の状況を見誤り、その間に市場動向が変化したという点ではMRJが置かれた状況とよく似ている。

技術的に成功することと、ビジネスで成功することは異なる。航空機ビジネスはひとたび流れが出来てしまうと、後からの挽回は難しい。三菱にとっては、ボーイングとエンブラエルの交渉の結果に関わらず、全体戦略の見直しが必要な時期に来ているのかもしれない。


ニューズウィーク日本版のおすすめ記事をLINEでチェック!

linecampaign.png

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

ニュース速報

ビジネス

フランス格付け見通しを「安定的に」引き下げ=ムーデ

ワールド

ヘンリー英王子夫妻、「ロイヤル」の名称使わず 王室

ワールド

新型ウイルス、中国内外で感染拡大 WHO「阻止の機

ビジネス

米国株は下落、新型肺炎懸念やさえない米指標受け

MAGAZINE

特集:上級国民論

2020-2・25号(2/18発売)

特権階級が不当に罪を逃れている── 日本を席巻する疑念と怒りの正体

人気ランキング

  • 1

    文在寅を見限った金正恩......「新型コロナ」でも問答無用

  • 2

    スキー・スノボに行かなくなった(行けなくなった)若者たち

  • 3

    韓国激震、新型コロナウイルスで初の死者 感染急増100人超す

  • 4

    マスク姿のアジア人女性がニューヨークで暴行受ける

  • 5

    感染者2200万人・死者1万人以上 アメリカ、爆発的「イ…

  • 6

    ロイヤルウェディングの招待状がほのめかしていたメ…

  • 7

    【新型肺炎】東京五輪開催、間に合うか? ロンドン…

  • 8

    「マスクは今週1億枚を供給、来月には月産6億枚体制へ…

  • 9

    新型コロナウイルス、人口2.6億のインドネシアで感染…

  • 10

    殺害した女性の「脳みそどんぶり」を食べた男を逮捕

  • 1

    夜間に発電できる「反ソーラーパネル」が考案される

  • 2

    文在寅を見限った金正恩......「新型コロナ」でも問答無用

  • 3

    ロイヤルウェディングの招待状がほのめかしていたメーガン妃の離婚歴

  • 4

    殺害した女性の「脳みそどんぶり」を食べた男を逮捕

  • 5

    スキー・スノボに行かなくなった(行けなくなった)…

  • 6

    新型コロナウイルスはコウモリ由来? だとしても、…

  • 7

    感染者2200万人・死者1万人以上 アメリカ、爆発的「イ…

  • 8

    韓国、キャッシュレス完了した国が進める「コインレ…

  • 9

    新型コロナウイルス、人口2.6億のインドネシアで感染…

  • 10

    クルーズ船内「悲惨な状態」 神戸大・岩田健太郎教授、…

  • 1

    「歯肉から毛が生えた」という女性の症例が世界で初めて報告される

  • 2

    一党支配揺るがすか? 「武漢市長の会見」に中国庶民の怒り沸騰

  • 3

    ヒヒにさらわれ子どもにされた子ライオンの悲劇

  • 4

    マスク姿のアジア人女性がニューヨークで暴行受ける

  • 5

    新型コロナウイルスはコウモリ由来? だとしても、…

  • 6

    夜間に発電できる「反ソーラーパネル」が考案される

  • 7

    韓国で強まる、日本の放射能汚染への懸念

  • 8

    「武漢はこの世の終末」 チャーター機乗れなかった米…

  • 9

    BTSと共演した韓国人気子役がYouTubeで炎上 虐待さ…

  • 10

    「拷問死したアメリカ人学生」がはばむ文在寅の五輪…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!