コラム

医学部定員増に反対してストを続ける、韓国医師の「ミゼラブル」な前途

2024年04月02日(火)07時00分

「運動により特権を得た人々」への批判

とはいえ、そこには同時に韓国の民主化や市民運動に共通する問題も見ることができる。それは、この国の社会運動が「民衆」を名乗る「エリート」に主導されてきたという問題だ。そしてそれは文在寅(ムン・ジェイン)政権下で「江南左派」と揶揄された「運動により特権を得た人々」への批判を生んできた。

韓国の医師は、極めて裕福であり、それ故に彼らによる自らの利益を守るための運動は世論の支持を集めていない。総選挙を控えるなか、尹政権にとって、医療改革問題は自らに支持を集めさせる最大の要素になっている。

韓国最大最強のエリート集団である大韓医師協会は、今後も自らの権益を「医療民主化」の旗印の下に守ることができるのか。その前途は厳しいものになりそうだ。

プロフィール

木村幹

1966年大阪府生まれ。神戸大学大学院国際協力研究科教授。また、NPO法人汎太平洋フォーラム理事長。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究。最新刊に『韓国愛憎-激変する隣国と私の30年』。他に『歴史認識はどう語られてきたか』、『平成時代の日韓関係』(共著)、『日韓歴史認識問題とは何か』(読売・吉野作造賞)、『韓国における「権威主義的」体制の成立』(サントリー学芸賞)、『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(アジア・太平洋賞)、『高宗・閔妃』など。


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