「日本学術会議」任命拒否騒動に見る国家と研究者の適切な距離
そしてその様な政府と研究者の関係は、政府関係委員会委員の任命を巡ってのみ取り結ばれる訳ではない。例えば大学では毎年のように、甞て退職した教員の受勲の為の推薦活動が展開される。「あいつがあの勲章を貰ったのだから、うちの先生にはもっと良い勲章が与えられるべきだ」。そう言いながら、小さな勲章の為に奔走する研究者の姿は、お世辞にも美しいものとは言えず、正に政府とそれにより与えられる権威に翻弄されるものと言うしかない。
近年の日本学術会議は、その機能を大きく低下させており、例えば、この機関が政府に「答申」を出したのは最も近いもので2007年、「勧告」は同じく2010年、政府に対して研究者の意見を届ける「要望」も2008年を最後に出されていない。殆どの活動は幹部会において議決される「提言」に過ぎず、その活動は少なくとも甞てに比べて低調と言わざるを得ない。背景には深刻な予算難があると言われており、210人の会員と2000名近い連携会員を集め、大規模な会議を開催する事すら難しくなっている。
しかし、それでも今回の日本学術会議委員任命拒否は、研究者の世界を大きく揺さぶっている。結局それは、日本学術会議が各種政府系委員会でも最も「格式」の高い存在であり、現実の会議が果たす役割を離れて、その委員となる事には、多くの研究者にとって、大きな象徴的な意味が存在するからである。だからこそ、政府にとってこの委員会は研究者に圧力をかける武器にもなる。
若い研究者のことも考えよ
そしてだからこそ、この様な日本学術会議を巡る政府への研究者の抗議は、その権威と縁遠い人達から見れば、時に、一部の研究者が自らの特権を維持する為に行動しているに過ぎないかの様にも映る。そしてだからこそ、政府もまたこの様な人々の反発を、学術会議に対する圧力として利用する事できる。結局、学術会議など一部の「象牙の塔」の住民が自らの特権を守る為に存在するものだ。だから彼らの特権を奪い取り、民意によって動かされるきようにしなければならない、と。
そして更には深刻なのは、同じ様な学術会議、いや正確には研究者の社会の現状への反発は、若手の研究者の中にもある事である。学術会議を構成する委員達の立場は、就職先の確保にすら苦しむ若手研究者の一部には、功成り名を遂げ特権的な研究者のそれに映っている。「学術会議はこれまで一体我々に何をしてくれたのだ」、そう叫ぶ彼らの声は「研究者の貴族院」の「ノブレス・オブリージュ」を問うている。
勿論、研究者の活動が政府から支援を受けなければ維持できない事は、日本のみならず多くの国において同様であり、だからこそ政府との関係を適切に取り結ぶ事は我が国の学問にとって重要だ。しかし、それは例えば審議会委員になる為に競争し、勲章の色を巡って一喜一憂するのとは全く別の事である。研究者と国家の関係は如何なるものであり、我々はどの様な距離を保つべきなのか。そしてその関係を国民や若手研究者にどう説明し、利益を還元していくのか。政府の任命拒否の是非とは別に、今回の事態は、研究者の側が国家とどう向かい合うか、を考える上でも重要な機会になりそうだ。
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