コラム

改めて問い直す「ヨーロッパ」とは何か...いま浮上する「本当の問題」とは?

2025年05月08日(木)14時00分

さらにカラスは21年、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領をEU首脳会議に招くというドイツのアンゲラ・メルケル首相(当時)の提案を批判。この見解は支持を得て、プーチンの招待は撤回された。

英誌ニュー・ステーツマンはカラスを「ヨーロッパの新しい鉄の女」と呼んだが、最高の褒め言葉はロシアが昨年、彼女を指名手配したことかもしれない。カラスは現在、EUの外相に当たる外交安全保障上級代表を務めている。


カラスはヨーロッパ政治の大きな流れも示している。女性指導者の「常態化」だ。

23〜24年にはバルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)で女性が同時に首相だった時期がある。21年には北欧5カ国(デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、アイスランド、フィンランド)で女性が指導者を務めた。イギリス、ドイツ、フランス、ベルギーでは、いずれも20年代に女性が首相の座にあった。

イタリアには今、初の女性首相であるジョルジャ・メローニがいる。これはヨーロッパ政治のもう1つの傾向を浮き彫りにする。ポピュリズムの台頭だ。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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