コラム

「クリスマスなし」の衝撃から立ち直れないイギリス

2020年12月24日(木)14時30分

クリスマスの混乱と言えば、個人的に思うのは鉄道のことだ。この時期に「必要不可欠な土木工事」が多いことは、イギリスの腹立たしい気まぐれでもある。外国で暮らしていた頃は、クリスマス休暇にイングランドに帰国して、友人の家にたどり着けなかったことが何回もあった。

複数の路線や区間が運休になり、「代替バス」は超満員。普段なら3時間のところ4時間半かかる。人々は電車に乗り、バスに乗り換えて、プレゼントであふれたスーツケースを抱えて再び電車に乗り込む。

今年は特に、このような事態を避けるよう鉄道会社は指示されていた。人々の移動をできるだけ短時間にして、車両を増やし、休日も通常どおりのダイヤで運行本数を減らさない。そうすれば、ぎゅうぎゅう詰めでウイルスを拡散させることもなく、終わったばかりの悲惨なロックダウンの間にあらゆるルールを守ったことへのご褒美を楽しむことができる、はずだった。

列車は空っぽ、予約はキャンセルだらけ

でも、今は誰もどこにも行けない。列車は空っぽのまま走り、予約したチケットは全て払い戻されるだろう。

今日、店は大混雑だったが、「パニック買い」ではない。イギリスでは多くの家族が交替でクリスマスのディナーを担当する。今年は姉、次の年は両親、その次はあなたと、順番にホストを務めることになっている。家族の中で七面鳥や付け合わせの担当が決まっていた。

ところが今年のクリスマスは集まれなくなって、それぞれの家庭でクリスマス用の七面鳥にパースニップ、帽子、クラッカー、チーズ、ポートワインもそろえなければならなくなった......。そして、今年の「ホスト」だった家には、これら全てが大量に残ることになる。

毎年の帰省を楽しみにしていた人は、ひどく落胆しているだろう。故郷から遠く離れた土地に暮らしている人はなおさらだ。

さらに、僕が呼ぶところの「クリスマス休戦」がある。普段は仲良くできない家族も、どうにか一緒にうまく過ごせるクリスマスは、「地球の平和と全人類の善意」の季節なのだ。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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