コラム

「クリスマスなし」の衝撃から立ち直れないイギリス

2020年12月24日(木)14時30分

ウイルスの変異種も見つかりロンドン周辺部は再びロックダウンへ Toby Melville-REUTERS

<この日を励みにこれまで厳しいロックダウンに耐えてきたのに、コロナ変異種の拡大と政府の後手後手の対応のせいで、もう家族の集まりも移動することも不可能に>

僕を含む多くのイギリス人は、12月21日が嫌いだ。1年で最も昼が短く、午後5時には真夜中のように暗くなる。一日中雲が垂れ込めて、日差しがほとんどのぞかなかった。ほんの少し寝坊したら、半日がつぶれてしまう。

この日まで陰鬱な日々が何カ月も続いたし、今後も何カ月もそうなるだろう。それでも「少なくともクリスマスはやって来る!」――世間はそう言うではないか。

ところが、今年に限り、クリスマスは来ない。今年こそ僕たちにはクリスマスが必要で、何カ月も前から、クリスマスはきっと祝えるはずだと政府も請け負っていたのに。

僕はついさっき、それほど遠くないところに暮らしている年老いた両親に、今年のクリスマスは会わないのが最善だと説明したところだ。僕が足を骨折したから、とでも言えればよかったけれど、明らかに感染力が強い変異種の新型コロナウイルスが急速に広がっていることと、そのために新しいルールや規制が始まったことを、話さなければならなかった。

「クリスマス中止」なんて、モンティ・パイソンの新しいコントのタイトルでもあるまいし。なんて日だ。

ボリス・ジョンソン英首相の方針転換があまりに遅かったことに、怒っている人もいる。「何週間も前に、それなりのクリスマスを過ごせると言ったじゃないか。そのつもりで計画を立てたのに!」

一方で、最新のデータに基づく判断だと受け入れる人もいる。後から考えてみれば、ジョンソンは少し早まってしまったのかもしれないが、「後になって考えれば何だって完璧」なのは当然だし、「誰だって、クリスマスの中止を宣言する人にはなりたくない」のは仕方ない......。

いずれにせよ、大混乱だ。フランスが12月20日深夜から48時間、イギリスとの間で貨物トラックを含む全ての輸送を停止しただけではない。人と物の往来がこれだけ大規模に止まり、もはや何も考えられないほどだ。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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