コラム

世界初コロナワクチン接種イギリスの第1号女性に、イギリス人の本音は

2020年12月14日(月)13時21分

個人的には僕自身は、春のうちか夏ごろに、オックスフォードのワクチンを接種できるのではないかと想像している。公園に設置されたテントで、英軍が指揮を執るなか、(国際救急救命ボランティア組織)セント・ジョン・アンビュランスのスタッフから注射を受ける、という感じではないだろうか。

◇ ◇ ◇

僕の父(80歳以上だ)があと10日くらいで第一陣のワクチン接種を受けられそうだと聞いて、僕は驚くと同時に喜んでいる。やるじゃないか、NHS!

でも父が接種のために家から車で40分ほど離れたバジルドンまで行かなければならず、母(70~80歳だからカテゴリー的には2番目)はまだ接種できないと聞いて、僕はちょっとイラついた。だめじゃないか、NHS!

厄介なことにこのワクチンは2回接種する必要があるから、僕の両親はひょっとすると長い距離を夫婦で4往復する羽目になるかもしれない。

父が予約の日時に行った際、母も一緒に行けば、もしかすると母も接種してもらえるかもしれないという話を聞いて、僕は複雑な気持ちになった。

母にとってはいいことだが、その施設では1日にワクチン接種できる人数が限られているのに、初日でも予約した時間に来られなかった人がいた場合、その分を当日飛び込みで接種してもらえるラッキーな人がいる可能性があるという話を聞くと、ひどく腹立たしく感じる。

つまり、もし母が父と一緒に行き、他の人が来られなかったら(「確実にできるとはお約束できませんが」)、制限数を有効に使うために母もワクチン接種をしてもらえるかもしれないということだ。だから母は、「万が一のチャンス」を期待して父と一緒に行くつもりでいる。

NHSとしては、予約をキャンセルしても基本的に罰則はないらしい。僕たちの感覚からすれば「もちろんのこと」罰金はなしだが、他の大きな処罰も何ら定められていない。ちょっとした理由をつけて予約をキャンセルし、同じ優先順位で新たに別の日時を予約できるのだという。

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プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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