コラム

ラグビー嫌いのイギリス人さえ目覚めさせた日本代表

2015年10月21日(水)13時10分

南アフリカ代表に勝利した日本代表は世界中のスポーツファンから称賛された Eddie Keogh-REUTERS

 スポーツというのは不思議なものだ。子どもの頃、僕は不運なことにラグビーをやる学校に入ってしまった。僕はラグビーがとことん嫌いだった。僕の学校の校庭はひどい粘土質で、ほんのちょっとでも雨が降れば、すぐにどろどろの沼地のようになった。

 そんな校庭で、ほとんど誰も好きじゃないラグビーのために、僕たちは泥の中でダイブさせられた。ラグビーとはまず間違いなく汚いもの、そして時には寒くて痛いものだった。

 イングランドでは、ラグビーといえば上流階級の子供のいく私立学校でやるものと決まっている。だから、公立学校である僕たちの学校がラグビーをするのは、上流の学校のまねごとをしていますよと宣言しているようなものだ。そのせいでまわりの学校の子供たちからは嫌われ、嫌がらせをされることもあった(嫌がらせされないのはラグビー部の部員だけだった)。

 その悲惨な学校に11歳で入学するまで、僕たちのほとんどはラグビーなんて一度もやったことがなかった。そして、ほとんどの者ができるだけ早い機会にラグビーから足を洗い、二度とやらなかった。僕にとってラグビーは、サッカー(何より僕が好きなスポーツだ)の上達を邪魔した4年間にわたる苦しみでしかなかったのだ。

 イングランドでは大抵、ラグビーはプレーするのも観戦するのも、キザな上流階級のやつらということになっている(イングランド西部では話は別で、幅広く人気がある)。

日本を応援する口実ができた

 そんなわけだから、僕がラグビーなんか全然好きでないことは分かってもらえたと思う。にもかかわらず、僕はほんの気まぐれから、たまたまイングランドで開催されたラグビーのワールドカップ(W杯)のチケットを何枚か買う気になった。ちょっとした旅行でイングランド西部ブリストルの友だちのところに泊まり、2試合ほど観戦に行くのはちょうどいい口実に思えた。

 まず、カーディフで開催されたウェールズの試合を見た。ウェールズの最大都市カーディフを僕は「イギリスの首都のうちの一つ」と考えているが、実際に行くのは初めてだった。

 ラグビーはイングランド西部では大人気だが、ウェールズでは「階級に関係なく」もっと盛んだ。だから、僕も試合の雰囲気を楽しみながらウェールズを応援できた(ウェールズは圧勝した)。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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