コラム

コロナ禍の中で始まった欧州サッカー選手権、コロナ対策はオリンピックとどう違う?

2021年06月15日(火)13時34分
サッカー欧州選手権

コロナ禍の中で開幕したサッカー欧州選手権(6月11日、ローマ、写真はイタリア対トルコ) Mike Hewitt-REUTERS

サッカーの欧州選手権は、サッカーファンにとってはワールドカップと同じくらい盛り上がる、大変レベルの高い試合である。

もともとは2020年開催のはずだったが、コロナ禍のために1年延期された。4年に1度開催され、同じく4年に1度開催されるワールドカップの中間に行われる。

最初の試合は6月11日のイタリア対トルコで、ローマのオリンピック・スタジアムで行われた。イタリアが3−0で勝利、常にイタリア優勢だったとはいえ、なかなか面白い試合だったのだが......。

テレビに映る、試合の最中の観客の盛り上がりと歓声を聞くと、複雑な気持ちになってしまった。日本よりはるかにコロナウィルスの被害が深刻な欧州で、いつもの欧州選手権と同じとは言えないものの、完全にお祭りムードだ。コロナ禍はどこ吹く風に見える。

これではまるで、オリンピックに反対している日本人が愚かみたいではないか。オリンピックでもたらされるリスクを考えて、不安な気持ちを抱く日本人の気持ちを、一体どうしてくれるのか。ため息が深くなるばかりである。

コロナ対策はどうなっているか。オリンピックとどう違うか

もちろんコロナ対策はしているという

最大の対策となっているのは、開催が11カ国の11都市、11のスタジアムで行われることだ。通常は、1、2都市での開催である。

ローマ(イタリア)、ロンドン(イギリス)、サンクト・ペテルブルク(ロシア)、ミュンヘン(ドイツ)、ブダペスト(ハンガリー)、セビリア(スペイン)、コペンハーゲン(デンマーク)、アムステルダム(オランダ)、ブカレスト(ルーマニア)、グラスゴー(スコットランド)、そしてバクー(アゼルバイジャン)である。

選手たちは、16強の前までは、中3日から4日あけて、欧州の各都市に移動することになる。

ここがオリンピックと最も異なる点だろう。

オリンピックは東京にほぼ一極集中だし、毎日のように競技が行われる。サッカーのほうは、広く欧州11カ国11都市に分散していて、数日おきに行われるのだ。

ただこれは、もともとはコロナ対策のために取られた措置ではない。プラティニ元欧州サッカー連盟(UEFA)会長が、「欧州選手権60周年記念大会」に託した願いだったのである(「61周年」になってしまったが・・・)。

そのほかには、スタジアムの観客数の制限がある。

ブダペスト(ハンガリー)のスタジアムでは、100%(6万1000人)の観客動員を目指した。バクー(アゼルバイジャン)とサンクト・ペテルブルク(ロシア)は50%を約束していた(それぞれ3万1000人と3万500人)。さすがに民主主義度に疑問符がつく国は、やる事が違う。

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。個人ページは「欧州とEU そしてこの世界のものがたり」異文明の出会い、平等と自由、グローバル化と日本の国際化がテーマ。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使インタビュー記事も担当(〜18年)。ヤフーオーサー・個人・エキスパート(2017〜2025年3月)。編著『ニッポンの評判 世界17カ国レポート』新潮社、欧州の章編著『世界で広がる脱原発』宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省庁の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早稲田大学卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU産ブランデー関税、34社が回避へ 友好的協議で

ワールド

赤沢再生相、ラトニック米商務長官と3日と5日に電話

ワールド

マスク氏、「アメリカ党」結成と投稿 自由取り戻すと

ワールド

OPECプラス有志国、増産拡大 8月54.8万バレ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 8
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    反省の色なし...ライブ中に女性客が乱入、演奏中止に…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story