コラム

日本とは「似て非なる国」タイのコロナ事情

2020年05月06日(水)11時10分

イスラム教徒はタイの人口の5%にすぎない少数派だ。70年代から彼らの間に「反イスラム的価値との決別」や「イスラムへの回帰」を呼び掛ける「ダッワ運動」が広まり、その中心となったのがタブリーギーである。タブリーギーのメンバーは月3日、年40日、生涯で4カ月間、集団で宣教に出ることが求められる。彼らは国内外のモスクに集まり、世界各地のメンバーと密集状態で寝食を共にする。

タイ政府公認のイスラム組織シェイフルイスラム事務所のウィスト・ビンラテー南部支部長は「イスラム教の主流派とは異なる」とし、集会には参加しないよう通告したが「敬虔」な信者には聞き入れられなかったのだろう、と皮肉った。

集会に参加したタイ人イスラム教徒が「われわれは神のみから報酬を得る」と述べる映像や、タイの鉄道車両内でコロナ感染により死亡したパキスタン帰りのイスラム教徒が、タイ人の顔に唾を吐き掛けていた映像がSNSで拡散。市民が一丸となってコロナ封じ込めに当たろうというなか、神のみを信じ、独自の信仰行為に固執する人々に対する不信と恐怖が広まっている。

タイと日本はやはり似て非なる国、安易な比較は禁物だろう。

<本誌2020年5月5・12日合併号掲載>

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2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。

プロフィール

飯山 陽

(いいやま・あかり)イスラム思想研究者。麗澤大学客員教授。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。博士(東京大学)。主著に『イスラム教の論理』(新潮新書)、『中東問題再考』(扶桑社BOOKS新書)。

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